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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
291/295

292 ドSで腹黒な彼

本当にR15です。そして大事な夜にルーファスは本領発揮してます。タイトル通りです。気をつけてお読みください。

「俺が今ほしいのは、マリアだけだ」


 ルーファスは抱きしめる手に力を込めた。存在を確かめるように手を這わせ、絹糸のような金の髪に指を差し込む。


「今日のマリアはいつもに増して、甘くて美味しそうだ」

「それはたぶん、あのお屋敷で塗られた香油が……」


 まだうぶさが抜けきらないマリアが、生真面目に返答したときだった。


「ひぁ!」


 耳をまれ、首筋に口づけられる。マリアは何回か与えられたことのある、このもどかしい刺激の先を知っていた。瑞々しい身体が何かを期待して火照り始め、身体の奥に変化が生じる。


「見えるところにはつけない。見えないところは……いいだろ?」

「ダメっ! もうすぐあなたのご両親にお会いするのに……」


 赤い花びらを散らして、結婚の挨拶に行くのはいくら何でも問題があるのではないか。

 止まない口づけがマリアの思考を侵食する。熱に浮かされた頭を必死に動かしているのに、ルーファスは喉だけでさも可笑しそうに笑った。


「俺の国では婚約中にするのは当たり前だ。離婚できないんだから相性も確認しておかないと、悲惨なことになるだろ?」


 それは本当のことで、特殊な性癖をもった人間はこの世に一定の割合で存在する。そうした相手とは添い遂げることは途方もない困難を伴うため、宗教上では問題があるとしても、ルシタニア王国では一般的に認められていることだった。


「でも、アストリアでは……」

「お前はもうルシタニアに嫁ぐんだ」

「あ……」


 独占欲を滲ませた口づけが鎖骨まで下りてきたとき、ルーファスがすっと体を離す。急激に遠ざかった熱に、マリアは戸惑っていた。不安そうに彼を見る。


「嫌ならこれ以上はしない。やめておくか?」


 彼から淡々と問われ、マリアは泣きそうになってしまった。熱くなっていたのは自分だけで、彼はすぐやめられるというのだろうか。


「どうする?」

「……ルーファス……」


 言わなくてもわかってほしい。潤んだ瞳で訴える。


「俺だって無理強いするのは本意じゃない」


 マリアは捨てられた仔犬のように身体を震わせた。恋する気持ちも、その後のアレコレもすべてルーファスに教えてもらっていたマリアには、恋の駆け引きはよくわからない。

 焦る気持ちが衝動を突き動かして、気がつけば怯えながら彼にお願いしていた。


「…………して……」

「聞こえない」

「続き、してください」


 ルーファスは意地悪くニヤリと笑う。まるで答えがわかっていたかのように。


「よくできました」


 そのままマリアは寝台に縫い付けられた。それはとろけるような夜が始まる合図。2人で見る夢はどこまでも甘く、終わらない。


 絡んだ手から流れ込む気持ちと、ふれ合う肌を行き交う熱情。繋がった影が揺れ、濃厚な夜に溶け込む吐息が甘く切なく響き渡る。

 そうしてマリアは初めての花を愛する人に捧げた。溺れるほどの愛と、引き換えにして。

次でエピローグです。何話かありますが、まもなく終わります。

最後まで見守ってください。


「溺れるほどの愛」この表現、大切です(笑) 詳しく書けない中で、色々お察しいただければ。




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