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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
287/295

286 過去との訣別

流血シーンがあります。

 女は頬を押さえながら、阿修羅の様相でいきり立った。


「こんの、小娘がぁぁぁぁぁ!」

「きゃあ!」


 完全に素を出した女が、マリアに猛然と襲いかかる。


「マリク、危ないっ!」


 それをカイが真正面から体当たりして助けてくれた。女が突き飛ばされたその隙に、ルーファスは足元に置いた剣を蹴り上げて華麗に取り戻す。


「邪魔だ!」


 間抜けな戦いに気をとられていたジャックを倒し、ルーファスはマリアと彼女を助けてくれた見知らぬ少年を、まとめて自分の庇護下に置いた。女は顔面から床に倒れ込んだせいでしたたかに頬をうち、虫のように手足をバタつかせている。


「ルーファス……」

「マリア……」


 涙目で見上げてくるマリアを、ルーファスは剣を持っていない方の手で力強く抱き寄せた。「怖かった」と顔にわかりやすく書いてあるのに、口には出さないのがまた健気で、どうしようもないほどの愛しさが、彼の心に降り積もる。


 自分の過去に巻き込んでしまった苦しみや、無事に再会できた喜び、マリアが戦ってくれた驚き……。そうした雑多な感情が、ルーファスの中でぐちゃぐちゃになっていた。

 臆病で大人しいマリアが、あの魔女に立ち向かってくれたことが未だに信じられない。彼の腕の中にいるマリアはいつだってガラス細工のように繊細で、今も抱きしめていなければ消えてしまいそうな、風にも耐えぬ可憐な花といった風情(ふぜい)なのに……。


 ルーファスはゆっくりとマリアから身体を離すと、淡い金の髪を優しく撫でた。過去の亡霊を今こそ葬り去らなければならない。


 ルーファスはマリアとカイを、ひとまずエドに託した。


「本当に無事で良かったよ、マリア。いや、実は俺、ルーファスさんが剣を置いたとき、もうダメかと諦めてたんだ。まさかマリアが自分で何とかするなんて思わなかったから」

「そんな……エドは諦めていたの? ちょっとだけ、ひどくない? でも心配してくれてありがとう、それにごめんなさい」


 マリアは(おおむ)ね計画通りに拐われただけだが、土壇場で足手まといになってしまったことは申し訳ないと思っていた。その心のままに頭を下げると、エドは罪悪感から苦笑した。


「まぁ、ともかくマリア、後はルーファスさんに任せようぜ。だから耳を塞いで目を瞑れよ。ルーファスさんからいつも言われているんだ。マリアには血とか刺激的なものは、極力見せるなって」

「え……」


 マリアは思わずルーファスの背中を見つめた。彼はあの偽りの母を、一体どうするつもりなのだろうか。


 マリアは決意した。


「私、見るわ。だって、ルーファスがどう決着をつけるのか、きちんと見届けたいもの」


 本当は怖い。でも安全なところで、何も知らされずに守られているだけの自分から卒業したい。


 ルーファスはとても落ち着いていた。マリアを人質にとられたことは許しがたいが、しかしこれは彼女が与えてくれたチャンスだと、そう信じていた。


「これで終わりにする」


 その言葉の通り、彼は過去を完全に断ち切った。


 血で濡れた姿で振り返ってみれば、目をそらさずに立っていたマリアと視線が絡む。もしマリアではない別の女性を選んでいたとしたら、いつまでもルーファスは過去の呪縛にとらわれていたままだっただろう。


 ルーファスは剣をおさめ、そして駆け寄ってくる最愛の人を、全身で受け止めた。

ルーファスの偽ママは切られたけど、生きています。

偽ママは戦いに関しては素人の、しかも女なので、ルーファスもいくら憎くてもフルボッコにはしませんでした。


ちゃんと法律の方で裁かれます。切られたことにも意味があります。それも併せてまとめは次回。



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