表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
285/295

284 許さない!

R15です。ルーファス偽ママの悪行三昧について書かれています。人によっては不愉快に思われる可能性があります。


「うふふ、あははは! 坊やはそんなにこのお嬢さんを失うのが怖いの? 楽しいわ、あなたの苦しそうな顔を見るのは……ふふふ」


 耳障りな女の嘲笑が、辺り一面に響きわたる。


 女にとって今の生活は退屈だった。国境近くの辺鄙な屋敷。愛人として過ごす日々。生活には困らないが、自己顕示欲が人一倍強い女には物足りなかった。

 王都でもっと華やかに暮らしたいのに、犯罪者としてお尋ね者の身である以上、派手な行動もできやしない。


 そもそも女は、昔からルーファスの存在を疎ましく思っていた。


 女には欲望にまみれた夢があった。

 ルーファスの父親と関係をもち、男子を産む。ルーファスを何らかの手段で消した後、息子を後継者として認めさせ、彼の父親も殺す。そうしてジルクリスト家の財産を丸ごと手に入れるつもりだった。


 たが計画は初っぱなから(つまず)いた。ルーファスの父親はいつまでも亡き妻を想っているうえに留守がちで、なかなか機会に恵まれない。古くからいる家令も邪魔だった。

 だから家令の食事に少しずつ毒を盛り、保険としてルーファスと妹のジルを手懐けていく……。


 ルーファスの父親がひどく酒を飲んだ夜、そのたった一晩だけ関係をもつことに成功した。

 だがその晩だけで子を宿せるとは限らない。念のため、当時の恋人ともその時期に頻繁に関係をもった。その結果として妊娠に至り、無事に男子を出産した。

 しかし金のことで恋人はあっさりと裏切り、悪事は白日のもとに(さら)された。そうなってしまえば恋人との間の子まで疎ましく、すぐに放置して逃げた。


「うふっ、楽しい、本当に楽しいわ……! そうね、坊やは昔から邪魔だったのよ」


 女は隻眼のジャックを見た。


「ジャック、坊やを捕らえなさい。このお嬢さんが皆に愛されるところを見せてやるのよ。殺すのはそれからにしましょう。ふふっ、あははは! 絶望の中で死になさい!!」


 ジャックがゆらりと立ち上がるのに、ルーファスは何もできずに立っていた。マリアの喉元にナイフが突きつけられている限り動けない。彼の唯一にして最大の弱点がマリアだった。


(この(ひと)は幼いルーファスの心を殺した……。それなのに、また彼を殺そうとしているの……? 今度は心と身体の両方を……)


 愛する人を2度も殺そうとする女に、マリアは全身の血が沸騰するような怒りを覚えた。


(この(ひと)だけは……絶対に……絶対に許さない!)


 本当のところ、マリアは人を故意に傷つけることはしたくなかった。人を傷つければ、肉体的にも、精神的にも、同じくらい自分も傷つくのがわかっている。

 でもこの(ひと)だけは許せない。彼の痛み。彼の悲しみ。彼が味わった苦しみを、一体何だと思っているのか。


 女はマリアを人質にとっていることで、油断しているようにも見えた。そして人質となったマリアには、ルーファスから教えてもらったばかりの護身術がある。


 マリアは覚悟を決めた。あまりの才能の無さに、ルーファスからも(さじ)を投げられたとか、そんなことはどうでもいい。今やらなくて、いつやるというのか。


(ルーファス。私……あなたが教えてくれた通り、きちんとやってみせるから……!)

次回、マリアが無双するとか……しないとか(゜ロ゜)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ