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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
273/295

272 (エド視点)マリアはどこですか? 1

 落雷のような凄まじい音がして、扉が勢いよく吹き飛んだ。遮るものが何も無くなった出入口からは、散らかった室内がよく見える。


 転がる空瓶に、机の端をポタリポタリと(したた)る酒。その雑然とした部屋の中でフリーズするのは、赤ら顔の男たちだった。


 あの間抜け面は、良い感じに出来上がってるのかな? それとも事態を把握できていないだけなのかな?


 それでも俺は、小屋の中にいる人数についつい腰が引けてしまう。少なくとも10人はいるな。えっと、15人弱か。

 多勢に無勢と言うくらいだから、やっぱり頭数は絶対的に大切だ。もちろん今回も例外じゃないと思う。


「だから言ったのに!」っていう怨念を込めて、隣に立つルーファスさんに視線を移すと、ルーファスさんは動揺するどころか、鉄仮面並みの無表情だった。何、この人……。人間……?


「女、子どもを売って飲む酒が、そんなに旨いか?」


 ルーファスさんの声はまったく抑揚がないわりに、不気味なほどよく響いた。そう言えば、昔、マリアはルーファスさんの声が落ち着くからって、俺に泣かされたときや何かあると、すぐに慰めてもらいに行っていたな。


 嫌なことを思い出して下を向く、そしてまた隣を見ようとした俺は氷のように固まった。


(あれ? なんか……寒気が……)


 ルーファスさんがいる方の半身が凍える。


「あーん? 兄ちゃんたち何なんだ……!?」


 1番近くにいた頬骨の突き出た痩せた男が、吹き(すさ)ぶブリザードにも負けず、ルーファスさんにわかりやすく絡んだ。や、やめとけよ!


 俺の予感は的中した。


 ルーファスさんは一切の迷いもなく、(くだ)を巻く男の両足を思いっきり横に払った。扉をぶっ壊した、あの神速の蹴りで。


「っでぇぇぇー! ■◎%*※ー!」


 男は訳のわからない叫び声をあげて崩れ落ちた。そりゃ扉を粉砕するくらいの蹴りだからな、人の骨なんて脆いよな……。あー、おっさん、なんかピクピクしてるよ。死にかけの何かみたい、マジで痛そう……。


 しかしそれを境に、部屋の空気がはっきりと変わった。小屋の中の男たちが得物(えもの)をもって立ち上がる。

 ここにいるのはただの酔っ払いじゃない。プロの犯罪者集団だ。現に顔つきがさっきまでとは、全然違う。


 今、奴らは本気で俺たちに襲い掛かろうとしていた。 

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