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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
265/295

264 あのお方

R15です。痛そうな描写があります。苦手な方はご遠慮ください(。´Д⊂)

 先に立ち上がった隻眼の男に呼応するように、マリアを拘束する太い腕がほどかれた。


「その娘は2度と手に入らない貴重な『商品』だ。絶対に手を出すなよ」

「へーい。じゃ、ねぇちゃん、また目ぇ、隠すぜ?」


 睨みをきかせる1つだけの眼にも臆せず、髭面の男は相変わらず軽い返事をした。そうして再度手にしたはずの目隠し用の布が、なぜだか髭面の男の掌からするりと抜ける。


「女の顔に痕がついている。目隠しはいらん」


 消えた目隠し用の布は、隻眼の男の手中に収まっていた。つまりは奪われたのだ。


「こんな痕、すぐに消えますよ。傷がついてる訳でもないんだから」

「手足の布も外せ」


 隻眼の男はマリアの顔の痕を見て不快そうに吐き捨て、さらには手足を拘束する布を忌々しそうに見た。


「ウィスタリアの女は価値が違うんだ、傷ひとつ、痕ひとつ、何もつけるな。そう()()()()からも言われている」


 髭面の男はめんどくさそうに肩を(すく)める。


「そんなこと言われたって、俺は()()()()のことなんて、何1つ知りませんからね。あー、怖い怖い。ほどきゃ良いんでしょ、ほどきゃ」


 マリアは自由を取り戻した手を(ほぐ)すように、早速手や指を動かしてみる。血が通うような感覚を覚え、次に足首も回した。


「逃げられたらどうするんスか?」

「こんな女が俺たちから逃げられると思うか?」


 足首をさすりさすりしたり、手をグーパーしているマリアの様子に男たちの視線が注がれた。それにハッと気づいた空色の瞳が、また瞬く間に怯えを含み、うるうると涙ぐむ。


「……たしかに、逃げられなさそうですね」

「だろう?」


 男たちの見解が一致したところで、髭面の男が嘆息まじりに言った。


「でもほかの女と子どもはどうします? あっちの方はむしろ相当きつめに縛ってありますけど」


「あっちの方」を示す指先につられ、マリアも視線を走らせた。

 目の前に広がるのは、衝撃的な光景。


 やはり部屋はマリアと男たち2人だけではなかった。


 倉庫のようなこの部屋には、マリアの入っている鉄格子のほかに、その斜向(はすむか)いにさらに小さめの動物を入れるような鉄の檻が2つ設置されていた。そしてその中には、それぞれ女と子どもが、3人ずつ、合わせて6人も入れられていたのだ。

 彼らは身動きも取れない窮屈な檻の中、目隠しに猿轡(さるぐつわ)、さらに麻縄のようなもので手足を拘束されていた。そしてそれらは全て、肉が歪むほどきつく締め上げられている。


 見ているだけで痛そうで、マリアは直視できなかった。人間の尊厳が(ごみ)のようだ……。


 隻眼の男は酷薄な笑みを唇にのせる。


「あっちは良い。子どもは基本的に労働力としか見られてないし、女どもの代金はもう前払いでもらっている」

「わかりました。まぁ、お頭がそういうなら」

「見張りだけはしっかりしとけよ」

「へーい」


 その会話を最後に、マリアだけが鉄格子に残され、鍵がしめられた。


「処女じゃなかったら、味見するんだけどな……」

「…………!」

「くくく、安心しな。俺も命が惜しいから、ねぇちゃんみたいなのは手は出さねぇよ。俺の仕事は『商品』の調達と運搬の準備までだからな、後のことは知らん」


 髭面の男はそのまま部屋の入り口を塞ぐように、どっしりと胡座(あぐら)をかいて腰をおろした。下卑た笑いを顔中に浮かべる。


「ご主人様に美味しく食べてもらえよ? あー、金持ちはいいよなぁ! 食べ放題なんだから」


 そうしてしばらくする髭面の男が船を漕ぎ始めた。どうやら見張りのお務めも果たさず寝てしまったらしい。マリアはごそごそとリボンの中に手を入れた。


(お(かしら)さんが言っていた、()()()()が悪い人たちのトップなのかしら……)


 ルーファスの温もりなんてあるわけがないのに、自由になった手で岩塩を撫でる。心細さがほんの少し癒された。


(まだまだ始まったばかりよね。……くすん……でも怖い……。ルーファス、早く助けに来て……)

あのお方って、なんか見た目は子ども頭脳は大人的な感じですが、たまたまこの表現です……。

すみません(-""-;)

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