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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
255/295

254 家を出る決断

「自分の本当の息子さんまで、棄てて逃げたの……?」


 それまで黙って話を聞いていたマリアが思わず口を挟んでいた。

 継子いじめは古今東西よく聞かれることではあるが、それはひとえに自分の子ども可愛さが原因だ。自分の子さえも見捨てたその女は、毒婦と言ってもまったく差し支えはないだろう。


「本当に情けないよな。自分の子どもにさえ愛情をかけていなかったような女を、『母親』として信じきっていたなんて」


 ルーファスは自嘲したが、マリアは何とも答えようがなかった。目の前に当然の如く存在しているものを疑うことは、誰だって難しい。


「家に帰ってからは、俺も周りの人間も、失われた時間を取り戻すために必死に努力したと思う。……でも結局1年ももたなくて、アストリア騎士団に入ることを理由に家を出たんだ」


 親に甘えるほど子どもらしくはいられなくて、自分の気持ちを隠して生きるのに慣れ過ぎていたルーファスは、どうするべきか、あるいはどうしたいのか、よくわからなくなっていた。

 行方知れずのあの女が憎い、更には可哀想なほど反省と後悔に(さいな)まれている父親さえも許せない。憎悪の猛獣が心の中を闊歩するのは、やはりどうしても苦しかった。

 感情が理性に勝てず、器用に取り繕って見せる笑顔の裏で、心の内に日々(おり)が溜まっていく。

 息苦しい毎日の中、家族よりも他人といた方が気が楽だと思うようになり、家を出る選択をした。


「お家を出ていくことに、お父様は反対しなかったの?」


 ルーファスは大切な嫡男だから、他国に行かせたくはなかっただろう。


「その頃父親は元気だったから、家を継ぐといっても時間がまだあったし、負い目のせいか、俺のしたいようにさせてくれた。

 尤も、家を継いでほしいと一応は言われていたさ。でもどうしても嫌な場合は、妹に婿養子をとると言ってくれていた」


 マリアはふと気になった。


「前にあなたとお話したとき、ご両親と妹さんがいるって言っていたわよね?」


 弟がいなくなった理由はわかったが、両親揃っているような口ぶりだったので念のため確認する。


「ああ、そのことか。叔母が父と再婚したんだ。父親は多忙で家のことまで手が回らなかった結果、あんなことになってしまった。だから同じ過ちを繰り返さないためにも、しっかりした女主人がいた方がいいと思って、俺が家を出るときに結婚してもらった。明らかに2人はお互いを想い合ってる雰囲気だったしな」


 叔母も若くして夫を亡くした身であり、子どもがいない分、甥姪(せいてつ)のルーファスとジルを我が子のように気にかけてくれる。

 マリアは安心して表情を緩めたが、すぐに神妙な顔に戻った。


「でも私、知らなかったわ。うちに来たとき、あなたがそんなに大変だったなんて……」

「マリア以外は何となく気づいていたさ。エドも遠巻きにしてたしな。でも今の俺があるのは紛れもなくマリアのおかげだ。お前が全面的に俺を慕ってくれたから」

「私のおかげ?」

「最初は正直鬱陶しかったけどな。後ろを引っ付いて回るお前があまりにも危なっかしくて、目が離せないでいるうちに、いつの間にか俺も変われたんだ」

次で過去話はおしまいです。いつも読んでいただき、ありがとうございます(*´∀`)



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