表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
252/295

251 ルーファスの過去4

 行き場所がなかったルーファスは、そのままガルディア王国の一大スラム「アンダーシュバルツ」に逃れた。病巣のように王都に絡み付くその場所は、今も昔も、世を怨む者たちの吹き溜まりだ。


 そこでルーファスは、デリシーとその母親と出会った。一緒に暮らすうちに、彼女たちの優しさが彼の凍てついた心を少しずつ溶かしていく。

 それでも1度地獄を見てしまった少年は、もう何も知らなかった頃の自分には戻れなかった。


 やがてデリシーの母親が亡くなり、2人きりになってしまう。ルーファスは時折危険な仕事をこなしながら、姉弟のように身を寄せ合って生きていた。

 デリシーが身体を売らずに済んだのは、ルーファスの元ご主人様から拝借した財産のおかげだったので、それだけはあの貴族の豚に感謝していた。


 そんなある日のこと。


 終末の街におよそ似つかわしくない、背の高い紳士がルーファスの前に現れた。それは彼の記憶より少し老けた父の姿。


「ルーファス……すまなかった。迎えに来たよ。さぁ、一緒に家に帰ろう」


 開口一番に謝罪した父を、ルーファスはどこか他人事のように眺めていた。彼の中で家族は既にいないのだ。そう思って生きてきたから、突然迎えに来たと言われても、感情が展開に追い付かなかった。

 ルーファスの逞しくなりつつある背中を、デリシーは音が鳴るほど勢いよく叩いた。


「良かったじゃない! 私のことなんて気にしないで行ってらっしゃいよ」


 デリシーとて寂しくないはずはなかった。しかし懸命に虚勢を張るその姿に、ルーファスも騙されてやらない訳にはいかなかった。

 だから彼は帰る条件として、デリシーの今後を父に託した。父もまた息子の気持ちを汲み、彼女を信頼できる夫婦に縁付けた。


 そうして7年ぶりに足を踏み入れた我が家。

 思い出の中よりもずっと豪奢(ごうしゃ)になっていた洋館に、ルーファスは懐かしさよりも先に居心地の悪さを覚えた。 


 小さかった妹はすっかり大きくなっていたし、赤ん坊だった弟はどこにもいなかった。そして自分によく似た叔母と名乗る女性がそこにいて、記憶との違いに残酷な時の流れを感じる。


 父親は彼の知るところの、すべてを話してくれた。

ルーファスパパが話してくれるのは、「パパの知るところ」のすべてです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ