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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第6章 ガルディア王国後編
250/295

249 ルーファスの過去2

R15。暗いお話です。全体的にはハッピーエンドになるので、安心してお読みください。

 そこからが地獄の日々の始まりだった。


 連れて来られたのは、狭い鉄格子が建ち並ぶ異様な空間。入れかわり立ちかわり人が出入りしては、優越感を隠そうともしない下卑た視線と言葉で犯される。

 ルーファスが守ってきた大切な何かが、身体からごっそりと抜きとられていくようだった。


 しかし見目の良いルーファスは、その日のうちに、とある紳士がお気に召したとの理由で外に出された。幼い胸が期待に膨らむ。


「僕が何かの間違いでここにいるって、その人は知っているんだ!」


 しかし鉄格子から解放された途端に、家畜のような首輪をつけられた。

 とどのつまり彼は奴隷商人から、買い主つまり新しい「ご主人様」の手に売り渡されただけだった。

 泡沫に見ることの許された夢がルーファスをかえって苦しめた。じゃらじゃらと鎖が(こす)れる不快な音が、終わらない悪夢を現実だと教えてくれる。


 ルーファスの新しい「ご主人様」は、禿げ上がった肥満体の貴族で、(しつけ)と称して些細なことで暴力をふるい、足下に這いつくばって許しを乞う存在を見下ろすことで、己の欲望を満たす種類の人間だった。


 それでもそのときのルーファスはまだ信じていた。母親や使用人に何かあったに違いない。問題が解決したら、居場所を探し出して迎えに来てくれるはずだと。

 だからどんな劣悪な環境に身を置こうとも、心だけは濁りに染まず、誇り高くいようと誓っていた。


 しかしそんなことは長くは続かなかった。ルーファスはある時、主から聞いてしまう。

 母親に売られたのだという、残酷な真実を。


 ルーファスはなぜ売られてしまったかわからなかった。家は裕福だったし、家族仲は良かったはずだ。

 そのとき(にわか)に、弟が産まれたときの母親の様子が甦った。底光りする冷たい目。あれは欲望に研ぎ澄まされた畜生の目ではなかったか。


(ああ……もしかしたらお母様は、僕のことが嫌いだったのかもしれない……)


 ここは遠く離れた異国の地。確かめる術は何もなかった。愛する人に裏切られた真っ白な心は、容易に闇に堕ちていく。

 誰も祝ってくれない6歳の誕生日。自分なんかが生まれてしまったその呪わしき日に、ルーファスは昔の自分と訣別した。

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