239 道中の会話(最後の街オレイユまで)3
R15です(笑)
「エドは王女様の近衛騎士なのよね? 卒業して間もないはずなのに、こうして他国にまで随行を許されるなんて、本当にすごいわ」
「ああ、実は俺、王女殿下の超音波攻撃に耐えられる唯一の騎士なんだ。だから卒業してすぐに、この仕事に就かされたんだよ」
いくら王女が極めて灰汁の強い人物で、人事が困難だからといっても、卒業してすぐの新米騎士が抜擢されるとは、俄には信じがたい話である。
「そういう試験があったの?」
「たまたまだよ。王女殿下が王立騎士学校の卒業式で来賓としてみえたときに、ちょっとしたことで揉めて、超音波攻撃が発動したんだ。皆が崩れ落ちる中、俺だけが平気だったから、そこを見込まれて、あれやこれやと今に至ってる」
「そういうことだったのね。……でも、こうしてまた会えたのだから、王女様には感謝しないとね」
胸を張るエドの前では、まだルーファスとイザークが静かにやりやっているのが見えた。マリアたちはそちらに耳を傾ける。
「君たちの馬車を宿から移動させたり、貴族街の地図を見せてやったり、ああ、ルシタニア王国への2人分の通行証も手配してやったな」
「…………」
「君たちを足止めするつもりない。一緒にいる間に動きがなければ、そのまま出発してくれればいい」
「それなら、まぁ、わかりました」
ルーファスは足止めされないことを知り、そこでようやく了解したようだった。
「ありがとう。うちに泊まったときは、また昨日のあの部屋を使えば良い。いつもは義兄上が恋人との逢瀬に利用していたんだ。天蓋つきのベッドでとても良かっただろう? 女性は喜ぶんだ」
「……どうも」
イザークの茶化すような提案を、ルーファスは適当にあしらった。マリアはその話から、王太子が部屋を間違えた理由を悟ったが、横から「マ、マ、マ、マ、マ」と変な声が聞こえてきた。
声の方に視線を向けると、エドが顔を赤らめて鯉のように口をパクパクさせている。
「エド?」
「マ、マ、マリアぁぁ……!」
「なぁに?」
エドはごくりと唾を飲み込んだ。
「お前……昨日、ルーファスさんと寝たのか?」
「……? ええ、そうよ」
「ま、まじか……」
「旅の最初の夜から同じお部屋よ」
エドの中でもくもくと、あんなことやこんなことをするマリアとルーファスの映像が浮かぶ。しかも旅の最初から同衾していたとなれば、マリアはルーファスから愛の手ほどきを受けてしまったに違いない。それはもう、色々と。
(マリアとルーファスさんが、既にそこまでの仲だったなんて……。結婚までは純潔を守る女だと思ってた……!)
エドはマリアの乱れる姿を想像すると、ある一点に血流が集まってしまう。彼は何かにじっと耐えながら、一気に押し寄せる不安と戦わなければならなかった。
(マリアがもう経験済みで……俺よりも……経験豊富とか、なんかショックだ……。婚約破棄できるのか……できたとしても、俺に満足させられるのか……!)
エドが泣きそうな顔で馬に揺られているのを、マリアは不思議そうな顔で眺めていた。
マリアは最後までは、まだいたしておりません。それに近いことはしてるけど(;゜゜)




