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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
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235 (エド視点) 王女の応援3

「それはどういう意味ですか?」

「あら、わからない?」


 王女殿下はわざとらしく肩を(すく)めてみせた。


 自分と同じ歳のこの(ひと)は、強烈な個性に隠れてわかりにくいが、頭は悪くない。歯に衣着せぬ物言いは、オブラートに包み込むのが常識とされる貴族社会では好まれないようだが、俺は結構気に入っていた。


 確かに王女殿下は感情の起伏が激しくて、癇癪(かんしゃく)を起こしたときの金切り声は凄まじい破壊力をもつ。

 でもただのヒステリーが「超音波攻撃」として騎士たちに恐れられているのだから、それはそれですごいことだと思う。1つの特技として誇っても良いんじゃないかな?


 それに俺にはなぜか「超音波耐性」という特殊能力があったから、何度叫ばれようと気にならない。一応、周りに流されて、何となく耳は塞ぐけど。


 そんな俺を王女殿下はお気に召したらしく、何かにつけてよく話しかけてくる。それも友達を相手にしているような、ざっくばらんな様子で。

 俺は卒業したばかりのひよっこ騎士で、しかもバリバリ平民だぜ? ここだけの話、不敬罪になったらどうしようかと、地味にビビってるんだが……。


「あなた、あのマリアって子が好きなんでしょう?」

「はい」


 王女殿下に俺の気持ちがバレていた。隠してもいなかったからあっさりと認めると、王女殿下は拍子抜けしたようだった。若干つまらなさそうに続ける。


「婚約していると、言っていたわね。残念でしょう?」

「それは……」

「私は少し残念だったわ」

「……?」

「まぁ、私は良いわ。でも、あなたは良いの? このまま諦めて」


 俺は王女殿下に嘘はつきたくなかった。いや、俺は自分の心に嘘をつきたくなかったんだ。


「諦めたく、ありません……」


 俺が正直な気持ちを話すと、「我が意を得たり」と王女は表情で語った。


 マリアの笑顔が脳裏に浮かんで、胸を切なさが締め付けた。婚約したと言われても、「はい、そうですか」とすぐに諦められるほど簡単な気持ちじゃない。俺の想いは年季が入ってるんだ。


「自由に恋ができる人は、とことんやれば良いのよ。それこそ結婚されたらおしまいよ。婚約破棄をさせるのはハードルは高いけど、まだチャンスはあるもの」

「婚約破棄……」


 突然飛び出した不穏な単語を、俺は口の中だけで反芻(はんすう)した。

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