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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
231/295

230 婚約したなんて聞いてない

 距離が離れていたことや素早く防御したことが功を奏し、マリアとルーファスは超音波攻撃の餌食にならずに済んだ。


「マリア! ルーファスさん!」


 人柄そのままの明るく快活な声がホールに響くと、エドは人目も(はばか)らず、腕が外れそうな勢いでブンブンと手を振る。


「エド!」


 マリアもまた、大切な幼なじみとの再会がうれしくて、身を乗り出すようにして手を振り返した。それに続いて、ルーファスも軽く手をあげる。


 マリアたちの一連のやりとりに、屋敷内の殺伐とした空気が予期せずして薄くなった。毒気を抜かれたエメラダ王女は、説明を求めてエドの脇腹を小突く。


「ちょっと、私にもわかるように説明しなさいな。あの金髪の子は知り合いなの? それに今、気がついたのだけれど、あの子の隣にいるのは、ルーファス・ジルクリストではなくて?」

「はい。実はですね……」


 説明を聞いて溜飲(りゅういん)を下げた王女は、マリアたちに階下に来るように命じた。エドがその伝令を買って出る。


「マリアと、ついでにルーファスさん、こんなところで会えるなんて! 王女殿下がお話があるそうです」

「ついで扱いか……。舐めた口をききやがって」


 迎えに来たエドの失礼な物言いはルーファスを呆れさせた。エドはその不穏な低音を聞き流し、マリアの細い腕をとる。


「あ、ルーファスも……」


 マリアはルーファスがついてきてくれるか不安になり、頼りない声を上げた。それを聞いたルーファスがさりげなくマリアを取り戻すので、エドはその行為に微かな違和感を覚えて鼻白む。


(ルーファスさん、まるでマリアを自分の女みたいに……)


 もやもやを抱えたエドに伴われ、マリアたちは王女の前に出た。エドは2人を残して王女の背後に下がる。


「お久しぶりね。ルーファス・ジルクリスト」


 王女はルーファスの名前を、何かしらの感慨をもって呼んだ。王女はアストリア王国最強の騎士であり、何度か近衛騎士の代役を務めた彼のことをよく覚えていた。

 そしてルーファスのやや後ろで、遠慮がちに佇むマリアの姿を確認すると、ほんのわずかに目をそらした。


「大体のところはこちらのエドから聞きました。けれど、いくつか教えてちょうだい。あなたたちはなぜ他国の王族の屋敷にいるのかしら?」

「はい、恐れながら申し上げます。私は家業を継ぐために、アストリア騎士団を退団いたしました。ここにいるのは旅の途中、こちらのイザーク殿下と縁があり、滞在をお許しいただいたからです」


 超音波攻撃から復活していないイザークを確認した後、ルーファスはマリアに目配せをする。


「彼女は私の婚約者で、私の祖国であるルシタニア王国で婚礼を行うため、共にここまで旅をしてきました」

「ああ、あなたは東方の出身でしたね」


 その会話に、過剰反応する男が1人。


「婚約者ぁ?!」


 素っ頓狂な声を飛ばすエドを見て、マリアは「あ」の形に口を開いた。

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