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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
215/295

214 決闘前

 夜が濃くなる中庭で、篝火(かがりび)煌々(こうこう)と燃えていた。


 決闘は御前試合と同じ形式で行われる。どちらかが負けを認めるか、立会人であるコウゲツが「勝負あり」の声をあげたときに決する、時間制限なしの一発勝負だ。剣は試合用の模擬剣を使い、身体には防具を纏う。


 侯爵とルーファスは、身体を軽く動かしたり、剣の感触を確かめていた。そこから少し離れたところで、マリアは男たちの無事を祈り、指を絡ませるようにして両手を組む。

 闇夜に浮かぶ篝火が、その可憐な姿を幻想的に切り取っていた。


 そんなマリアに引き寄せられるように、サクラが近寄って来る。


「マリア様、ご主人様は大丈夫でしょうか? ご主人様が、勝ちますよね?」

「それは……」


 ルーファスの強さを知っているマリアは答えられずに、口ごもった。するとそこにコウゲツがやって来る。


「大丈夫ですよ、サクラ。ご主人様はとてもお強いのですから」

「そうね……! ご主人様が負けるはずないじゃない……!」


 サクラは拳を握りしめて、己の主人を熱く見つめた。コウゲツもそれに(なら)ったが、すぐに熱が下がる。


「マリア様、あなたを迎えに来た方はお強いんですか? ……とりあえず力だけは、とんでもなく強そうですが……」


 コウゲツは粉微塵(こなみじん)に吹き飛んだ扉を思い出しているようだった。マリアは遠慮がちに首肯する。


「はい……。あの……本当に強いです。侯爵様なら、ルーファスの強さは、よくご存知だと思うんですけど……」


 サクラとコウゲツが侯爵を応援するのは明らかだったが、マリアとしては、やはりルーファスに勝ってほしかった。

 もとよりマリアの気持ちとは関係なく、ルーファスは規格外に強い。そのため、侯爵の強さがどれほどであろうと、普通に勝負すればルーファスが勝つのは間違いないように思われた。


「マリア」


 話に夢中になっている3人のすぐそばまで、侯爵が来ていた。サクラとコウゲツは音もなく、その場を離れる。


「侯爵様……」


 彼は右手を持ち上げ、指の腹でマリアの滑らかな頬をなぞった。大切な宝物を扱うように、とても優しく。

 背の高い侯爵を見上げると、彼のエメラルドの瞳に炎が揺らめいていた。その情熱的でそれでいてなぜか悲しみが宿る瞳に、彼女は何も言えなくなり、見つめ合う。


 ふいに侯爵はマリアを抱いた。右手でマリアの頭を自分の胸に押し付け、左手で背中から腰の辺りを抱き寄せる。距離を零にするように、強く強く抱きしめる。苦しいほどに強く……。


 頭の真上から侯爵の声がして、少しだけ顔を上に向けると吐息が額にかかった。それから目の端にルーファスが映る。他の男に抱きしめられているマリアから、ルーファスが辛そうに目をそらすのが見えた。

ルーファスは、今かなり我慢してます(--;)

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