20 マリアは好きな人いるの?
マレーリーの衝撃発言から、最初に正気に戻ったのはルーファスだった。
「マレーリー様、それはどういう意味ですか? まさか、この屋敷を借金の形にしたのですか?」
ルーファスが強張った表情でマレーリーを問い詰めた。しかし、マレーリーはいつもの気楽な笑みに若干の憂いを含ませただけだった。
「うん。それで借金がやっぱり返せなくてね、この屋敷とはサヨナラしないといけなくなったんだ……」
ルーファスはマレーリーの借金について追及したいところだったが、マレーリーの性格上それは断念した。彼に常識は通用しない。
「引き渡しの期限はいつですか?」
「2週間後だよ」
すなわち、6人は2週間後に全員が路頭に迷うということだ。セバスが大きな音を立てて立ち上がり、マレーリーに詰め寄る。セバスの目には涙が浮かんでいた。
「マレーリー様、私たちはともかくお嬢様はどうなさるのですか?! アジャーニ子爵家をどうなさるおつもりですか……!」
「それついては僕も考えていたんだけどさぁ。新しくこの屋敷の持ち主になる人が、このまま僕たちも住み続けて良いって言ってくれてるんだ。あとさぁ、子爵家としての体裁も居候の身では整わないし、もうそれもやめちゃおうかなっと思ってるんだ!」
「な……! まさか、爵位を返上するおつもりですか……!」
セバスの顔は青ざめ、悲痛な声をあげた。
「その通りー」
内容に似つかわしくないマレーリーの気楽な返事に、ドリーの叫び声が食堂に響いた。エドはまだ石化したままで、マリアは震えていた。
「で、ここからが大事なところなんだけど。ねぇ、マリア?」
今までの話に大事ではないことなんて1つでもあっただろうか。マリアがこれからまた何を聞かされるのだろうと怯えていると、叔父から予想外の質問をされた。
「マリアはさぁ、好きな人いるの?」
「え?」
マリアは怒涛の展開に、既に頭が真っ白になっていた。彼女はこんなときに自分の恋の話なんて、とてもできる気がしなかった。




