表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
207/295

206 抜かれる剣

 ルーファスはその最愛の人を強くかき抱いた。剥き出しのマリアの肩に触れてその懐かしい感触を得たとき、彼の胸に万感の思いが去来する。


「無事か……?」


 彼女はルーファスの固い胸板に頬を寄せながら、こくりと頷いた。その回答に安堵の息を吐いたルーファスだったが、すぐに表情を一変させ、侯爵を睥睨(へいげい)する。そうして抑揚のない声で憎き恋敵に宣言した。


「借りは返させてもらう」


 マリアを離し、ゆっくりと侯爵に近づくルーファスの瞳は完全に凍てついていた。絶対零度の空気を纏い、無表情で一歩また一歩と侯爵との距離をつめていく。

 ルーファスは剣に手をかけた。カチャリと無機質な音がして、剣が鞘から引き抜かれる。


 その音で、マリアは急速に頭が冷えていくのを感じた。彼女はルーファスの腕を引っ張って止め、侯爵との間に立つ。


「ルーファス! 何をするつもりなの? 侯爵様はあなたが思うほど悪い方ではないわ。私もこうして無事だったのだから、その剣はおさめて」


 旅に出てから改めて感じたことだが、彼は自分が必要だと判断したときには、躊躇いなくその剣をふるう。

 まさか命まで奪うようなことは無いと思うが、ルーファスが放つ殺伐とした空気はマリアを慌てさせた。


 しかしマリアの訴えはまったくの逆効果だったようだ。侯爵を庇った彼女に、気のせいではなく部屋の温度が下がる。


「なぜ、庇う? 危ないから下がれ」

「いいえ」

「下がれと言っている」

「あなたが剣をおさめてくれないと……」


 マリアが珍しく抵抗したのを見て、ルーファスも侯爵もそれぞれに思うところがあった。男たちの心も知らず、彼女は続ける。


「今日あなたが来なかったら、今からここでお別れのディナーをする予定だったの。それから明日、侯爵様があなたのところまで連れていってくれることになっていたのよ。だからもう、そんな物騒なものはしまって? お願い……」


 ルーファスは眉ひとつ動かさないかわりに、質問を返した。


「ここは誰の部屋だ?」

「? 侯爵様のお部屋よ」

「2人分しか用意されていないように見えるが」

「だって、侯爵様と2人でするんだもの」

「……いつの間にか、ずいぶんと仲良くなったものだな」


 仲を誤解されたと思ったマリアは、あたふたと慌てて余計なことを言う。


「あの……これには色々と事情が……」

「色々って、なんだ」


 詰問口調のルーファスの様子に、彼女は墓穴を掘ったことを悟ったが、()りとて今更どうすることもできなかった。

ちょっと揉めてますΣ( ̄□ ̄;)でも、安心してお読みください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ