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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
195/295

194 不本意な扱い

(しつけ)……?」

「聞こえていたのか? いや、マリアは本当によく手懐(てなづ)けられているな、と感心してしまってね」

「手懐けられる……?」


 マリアは侯爵の失礼な物言いに真意をはかりかねて反芻したが、侯爵はただルーファスに従順すぎる彼女に苛立っていただけだった。


 もともとマリアとルーファスの間には直接の主従関係はないものの、本来の上下関係はマリアの方が上のはずだ。なぜならば、彼女は貴族令嬢で、ルーファスは王宮騎士の仕事の傍ら、世話になっている屋敷のお嬢様の護衛も、兼ねて請け負っていた立場に過ぎない。


 だからいくら恋人関係に発展したとしても、一心にルーファスを慕って約束を守ろうとするマリアが、あまりにも健気(けなげ)で憎らしい。

 だから侯爵はマリアとルーファスの関係を揶揄(やゆ)してみせたのだった。可愛らしい彼女が悪い男に(たぶらか)かされて言いなりになっていると、強烈な皮肉を込めて。


「あの男に飼い慣らされる必要はない。黙っていれば、少しくらい飲んでもバレやしないさ」


 侯爵は柔和な微笑みでそっと囁いた。

 マリアは悪魔の誘惑に黙ってしまった。侯爵は確かな感触を得て、にんまりと口の端を持ち上げる。彼女が(おもむろ)に口を開いたときには、誘惑が成功したのを確信した……はずだった。


「侯爵様は私を猛獣か何かだと思っていませんか?」

「……マリアが猛獣? 言っていることがよくわからない」

「躾とか手懐けるとか……私、お酒を飲んでもそんなに暴れたりしないです。侯爵様にも絶対に何かしたりなんかしません! 叩いたりとか、つねったりとか、引っ掻いたりとか……」

「いや、なんか話の方向が間違ってるな……」

「そんなにご心配なら、なぜそんなにお酒を勧めるんですか?」


 嫌みが通じていなかったばかりか、温厚な彼女を怒らせてしまったことに、侯爵は珍しく慌てた。お別れのディナー自体が無くなってしまっては元も子もない。


「気分を害したのなら謝るよ。だが、君と同じものを食べて、同じものを飲みたいんだ。少しくらいいいだろう?」


 彼がまだ諦めずに誘ってくるので、さすがの彼女も不審に思った。


「あの……侯爵様は何を考えてらっしゃるんですか? やけに私にお酒をお勧めになって……」


 そこで彼女は一瞬息を止めた。そうして、彼の顔を不安そうに見つめる。


「まさか、また何か(たくら)んでいませんか?」

ルビは丁寧にふるようにしてます。邪魔だったらごめんなさい(>_<)

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