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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
193/295

192 3日目の夜に

「喜んでいただけたなら、うれしいですけど……。そんなに良い案でしたか?」

「ああ、名案だ。元気になれそうな気がする」


 マリアは侯爵が見せた予想以上の反応に戸惑ったが、彼が元気を取り戻してくれたことにひとまず胸を撫で下ろした。

 ただあまりに期待が大きいと、彼が満足できるような思い出をつくってあげられる自信がない。彼の要望は可能な限り、受け入れる心づもりで、彼女は話を詰めることにした。


「具体的にはどうしましょうか? 今更逃げませんから、お出かけでもしますか? 車椅子に乗られるのなら私が押しますし、侯爵様が楽しめるように何でもお手伝いさせていただきます」

「何でも、か……。それなら3日目の夜に、マリアとお別れの食事会をしたいな」


 侯爵からの欲のない提案に、マリアは小鳥のように小首を傾げた。たしかに彼は病床に臥していたため、食事らしい食事は取れていなかった。流し込まれる最低限の栄養と水分は味気ないものだっただろう。だから今の彼にとっては何よりのご褒美なのかもしれないが、彼女は何となく肩透かしをくらった気分だった。


「家でディナーをご一緒するということで、よろしいですか?」


 彼が首肯(しゅこう)したのを見て、彼女はせめて心のこもったものにしたいと、その準備について素早く頭を巡らせる。


 まだ使用人たちは戻って来ていないから、マリアとサクラで準備しなければならない。お別れの日に相応しい晩餐にするためには、メニューの選定も含めてそれなりの支度が要りそうだ。


 彼女が真剣に考えているのを見て、侯爵は目を細めた。好きな女が自分のために、あれこれ考えてくれるのはうれしいものだ。


「マリアと美味しいワインで乾杯したいんだ。うちには食事に合う年代物の貴重なワインがある。君の生まれた年のもあるはずだ。私がいくつか選んでおこう」

「ワイン……。侯爵様はワインがお好きなんですか?」

(たしな)む程度にはね」

「そう……なんですね……」


 マリアは、ルーファスとデリシーが出会いのときと別れのとき、一緒に酒を飲んでいたことを思い出した。大人は節目や何かを分かち合うとき、酒を酌み交わすことが多いのだろう。

 しかし彼女はすぐに酔ってしまうため、ルーファスから飲むのを止められていた。

嗜む程度って謙遜する人は、大体強いです。

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