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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
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189 愛で腹は膨れない

「でも、愛する人と一緒なら、どんな試練も乗り越えられると思います……」


 マリアは自分の「好き」という気持ちを大切に(はぐく)んでいきたいし、その果実が結婚であると信じている。だから結婚相手を条件で選ぶようなことはしたくない。


 マリアがそんな考えを遠慮がちに口にすると、侯爵は冷めた口調でそれを諌めた。


「宗教上の理由で離婚はできないのだから、結婚相手を選ぶときには一時の恋愛感情なんかに流されてはいけない。マリアは明日のパンもない生活に耐えられるのか? 愛は大切だが、それで腹は膨れないぞ」

「それは、確かにそうかもしれませんが……。ルーファスの家はそんなに大変な状況なんですか? やっぱりお父様の体調が良くないから……」


 そんなところへ嫁いで、まともに働いたこともないマリアに何ができるのか、不安に包まれて恐る恐る尋ねた。


「だからなぜ、それを私に聞くんだ? 私が本当のことを教えるとは限らない。君は万事につけて考えが浅い。もっと……」


 説教を垂れながら、侯爵はこめかみに指を手を当てて、悩ましげに眉間に皺を刻んだ。


(ルーファスはまだ若いし、彼はこれから家業を継がなければいけないから、大変なこともあるだろう。それに成功した商人というのは、名誉と爵位を望むと相場は決まっている。王家の血を引く貴族令嬢を妻に迎えたとなれば、たとえ愛し合って結ばれた2人でも周りはそうは思わない。周囲からの心無い言葉に、純粋なマリアは傷つくかもしれない)


 それでもマリアはルーファスしか愛せないのだから、侯爵は彼女に生きていくための心構えを滾々(こんこん)と説く。パンの話は例え話の1つに過ぎない。


 熱意を込めて語っていた侯爵がふとマリアを見ると、彼女は呆気(あっけ)にとられた顔で彼を見ていた。


「……何、ボーッとしているんだ。口を閉じなさい、マリア」

「え! ……あ、はい」


 彼女は頬を桜桃色に染め、慌てて口もとを覆った。

ルーファスの実家については、旅の終わりのお楽しみです。可哀想なことにはなりませんので、安心して読んでください。

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