表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
186/295

185 驚くべき提案

 決断の遅さを悔やむマリアを、侯爵は静かに諭していく。


「マリアは右も左もわからないこの広大な王都シュバルツで、どうやってルーファスを探し出すつもりなんだ? スラムは言うまでもないが、たとえ貴族街であっても、か弱い女性が1人で出歩けるほどここは甘くない。君が一刻も早く私のもとを去りたい気持ちはわかるが、それはただの蛮勇だ。絶対にやめた方が良い」

「……そんなこと、わかっています」


 返答に窮した彼女は小さな声で言い返すのがやっとだった。


 そもそもマリア自身も、1人でルーファスを探し出せるとは思っていない。だからこそイザークの屋敷に一旦身を寄せる計画を立てていた。イザークの屋敷はルーファスとの待ち合わせ場所でもあるし、何よりも王子であるイザークの力を借りられれば、ルーファスの捜索も容易になるだろう。

 しかし、イザークの屋敷に行く方法がわからないから、街で情報収集する必要がある。そしてそれが()()()危険を伴うということも、彼女は理解しているつもりだ。


「……いや、マリアは全然わかっていない。ガルディア王国の貴族は裏家業に手を染めている者も多い。だから貴族街ですら怪しい輩が幅をきかせている。君みたいな子が無防備にさまよい歩いてたら、人買いに(かどわ)かされて、あっという間にゲームオーバーだ」


 侯爵としては悪党どもが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する場所に、可愛いマリアを放り出したくない一心だったが、言下に否定された彼女はどうにもやるせない。わかっているとかいないとか、そんなことは彼女にとっては大した問題ではない。

 このままルーファスに会えないまま、時間だけが経過していくのが怖い。この1秒1秒が積み重なれば、いつか永遠になってしまう。


 解決策を見い出せず、思い詰めた様子で俯いてしまったマリアに、侯爵は驚くべきことを提案にした。


「ここで待っていればいい」


 彼は少し辛そうに顔を歪め、皮肉げな笑みを唇にのせる。


「3日経ってもルーファスが現れなければ、私が君を彼のところまで送ってあげよう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ