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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
184/295

183 最悪の事態?

 マリアが最も恐れていたことがある。それは逃げ出す前に侯爵に見つかってしまうことだ。そして今、彼女は想定していたその最悪の事態に直面していることを悟った。


 それでも何とか我に返り、彼女は跳ねるように椅子から立ち上がって、この場から逃れようとした。その拍子に椅子が勢いよく倒れたが、何の音もしなかったのは、毛足の長い高級絨毯のおかげだろう。


 しかしこの上なく焦っているマリアは、その倒れた椅子に足をとられた。バランスを崩して前のめりに身体が揺らぎ、あわや転倒かというところで、侯爵が彼女の腕をがっちりと掴んで支えてくれる。

 その疾風のごとく素早い動きは、とても今まで病床に臥していた人とは思えない。少なくとも万全な状態な彼女よりも、余程俊敏なのは間違いなかった。


 侯爵のおかげで転倒を免れたマリアだが、彼女は彼の腕を渾身の力で振り払った。そのままの勢いで足元に転がる椅子を乗り越えようとするが、慌てすぎて目算を誤り、向こう脛を激しくぶつけてしまう。


「……っ」


 火花が散るような痛みに、声も出せずに(うずくま)った。


「……マリア、少しは落ち着きなさい」


 侯爵は呆れたように息を吐いて、彼女をそっと抱き起こした。そのまま仔猫のように抱えながら、彼は椅子を元の位置に戻し、彼女を座らせる。簡単に一言断ってから、彼がスカートを上げて彼女の脚を確認すると、ぶつけた部分がうっすらと赤くなっていた。


「これは痛そうだ。青くなるだろうな。あとで治療させる」


 マリアは羞じらいと痛みから涙目になり、万事休す、と力なく肩を落とした。

向こう脛は、弁慶の泣き所と言われる、ぶつけるとものすごく痛いところです。

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