表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
179/295

178 快復

 献身的な看病を続け、はや2週間ほどが経っていた。発作の回数は劇的に減り、素人目から見ても快方に向かっているのがよくわかる。サクラたちによると、侯爵は時折目を覚ますこともあるらしいが、マリアが看病するときにはいつも彼は眠っていた。


 今日もマリアが看病のために侯爵の部屋を訪れると、部屋の中から微かな話し声が聞こえてきた。そのことに気付いた彼女はノックをする手を宙で止める。誰が何を話しているかまではよく聞き取れない。男性の声のようだが、コウゲツとあとは誰だろうか……?


 マリアが入りあぐねて扉の前で待っていると、部屋から侯爵の主治医が顔を見せた。どうやら声の主はコウゲツとこの主治医らしい。


「マリア様、ちょうど良いところにいらっしゃいました。今、診察をしていただいたところです」


 コウゲツは彼女の姿を認めるとすぐに目尻を下げた。最初はどちらかと言えば取っつきにくい印象だった彼も、今やすっかり好好爺(こうこうや)といった風情だ。そのコウゲツの表情はとても明るい。そして主治医もまた、コウゲツ同様にとても晴れやかな顔をしていた。


「ご主人は峠を越えました。ここまでこればもう安心です。ご主人の強運もあるかもしれませんが、何よりも皆さまの心のこもった看病のおかげでしょう。よく頑張りましたね」


 主治医の言葉に、マリアの澄んだ瞳から真珠のような涙がハラハラとこぼれ落ちる。


「良かった……本当に……」


 彼女は侯爵を病から生還させたことで、父の命を奪った病に勝ったような気がした。それと同時に、彼女の中にあった父を救えなかった罪悪感が今ようやく浄化されていく。

 感極まった彼女はそれ以上何も言うことができず、祖父と言っても良い年齢のコウゲツと抱き合って、侯爵の快復を喜んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ