表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
177/295

176 ブラックとの再会

 発作は頻繁で、マリアは看病している間、一睡もできなかった。発作が起こる度に薬を吸入させ、落ち着くまで背中を優しく撫で続ける。熱が高いので、水に浸したタオルを何度も替え、汗をかけば丁寧に拭き取ってあげた。


 侯爵はほとんどの時間を目を閉じていたが、時々焦点の合わない瞳で虚空を見つめ、苦しみで唸り声をあげる。マリアは自分の父の姿を重ね、苦しむ彼の姿に涙を抑えることができなかった。父が病に倒れたときはまだマリアは幼くて、ままごとのような看病しかさせてもらえなかったが、父もこのように昼夜分かたぬ苦しみに襲われていたのかと思うと、今さらながらに胸が締め付けられる。


 看病と休憩時間以外は、マリアは料理や掃除、洗濯と休む暇もなくひたすら屋敷の仕事をこなした。そのときに自由に庭に出られるので、ブラックの姿を探すのが日課となっていた。


 ある日、小さな物置の陰で鎖に繋がれているブラックの姿を発見した。ブラックのそばにはきれいな水と空っぽの皿があり、毛づやや血色の良さから、きちんと世話をしてもらっているのは明らかだった。ブラックはマリアを見て、千切れんばかりに尻尾を振る。


 ブラックと一緒に屋敷から去るつもりだったマリアは、元気な様子を見て安堵の息をついた。そこへサクラが餌をもってやってくる。


「マリア様、こんなところにいらしたんですか? そのワンちゃんもきちんとお世話してますから大丈夫ですよ」

「はい……。大変な中、この子の面倒まで見てくださって、本当にありがとうございます」

「これもご主人様の指示だったんですよ」

「……え?」

「マリア様のお世話と一緒に、この子犬の世話もするようにと仰せつかっていたんです」


 マリアは暢気に尻尾をふっているブラックを見て、なんだか切ない思いにとらわれるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ