表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第5章 王都シュバルツ編
172/295

171 無意味な尋問1

「もう何も聞くことはないでしょう? 早く私を解放してください。婚約者をいつまでも異国に一人にしてはおけない」


 ガルディア王国治安部隊の関連施設の一室で、ルーファスは目の前に座る壮年の騎士に詰め寄った。ルーファスは話せることは既にすべて話してしまったし、尋問すらない無駄な待ち時間が多く、はっきり言ってここに留め置かれる意味がわからない。


「ああ、あの娘か。今まで君がご令嬢たちの艶めいたお誘いにも、一切靡かなかった理由がわかったよ。今度紹介してくれないか」


 壮年の騎士はどこか遠くを眺めて言う。過ぎ去りし青春時代でも思い出しているのだろうか。その暢気な様子はルーファスを苛立たせるには充分だった。


「そんなことよりも、一刻も早く解放してください!」


「たしかに、あんな可愛い子をいつまでも1人にしておくのは危険かもしれない」

「でしたら早く!」

「うーん、そうは言ってもなぁ。私も君が関係ないとわかっているんだが、上からなかなか赦しが出なくてね。私も所詮組織の一員。上の命令には逆らえないんだ」

「『上』?」


 もちろん尋問というものは、身柄の拘束という人権の問題を孕むので、騎士1人の意思で行えるものではない。そのため「上」が絡んでいるのは至極当然のことなのだが、他国の施設を借りてまで行うのはかなり大事(おおごと)になってしまう。


「上の上の上の……かなり上の意向だよ」


騎士の答えはルーファスの予想通りのものだった。


「とりあえず君を解放する許可が出ないんだ。もっと深く尋問しろというだけで。しかも最近はその指示すらないからどうしようもない。でも聞いた話だと、君は休暇のあとに騎士団をやめる予定なんだろう? タイミングとしては充分に怪しいから、そう言われても仕方ないさ」


 騎士は言葉にほんの少しの(とげ)を含ませて答えた。


「そもそも、どうして私たちがあそこに宿泊していることを知っていたのですか?」


 ルーファスは気になっていたことを尋ねる。


「ああ、上から言われた通りにしただけだよ。あの宿に君が女と泊まったから、『可及的速やかに』引っ張ってこいって」

「あと何か言われましたか?」

「あとは……女は無関係だから、君に抵抗された場合は容赦はいらないが、女の方には一切手出し無用だとも言われたな。君には勝てる気はしないから、素直についてきてもらえて安心したよ」


 騎士はルーファスの気も知らずに、わざとらしく肩をすくめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ