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169 同情と愛情
「……もし君のそばにいられたのが私だったら、私のことを愛してくれた?」
侯爵の眼差しがマリアを強く射抜いた。彼の眼差しには、彼女まで焼き尽くしてしまうような熱が籠っていて、自分の気持ちには一切迷いがないマリアでも、その情熱の奔流に巻き込まれてしまいそうになるほどだった。
「それは……」
マリアが答えようとして口を開くと、侯爵が首をふった。
「こんな質問しても仕方なかったな……すまない、忘れてほしい」
彼は自分よりもだいぶ年上の、余裕のある大人の男のはずで、そんな彼がマリアの愛をただ欲している姿は、彼女の胸を抉るようだった。なぜだかマリアまで切ない想いに駆られ、呼吸が苦しくなる。
「……侯爵様」
でも同情と愛情は違う。彼の気持ちが本物であるとマリアにもわかってしまった今となっては、それこそ同情なんて決してしてはならないことだと思った。
同情と愛情は似て非なるものなので、それを混同してしまうのはあまりにも失礼だということです。