157 落ち着かなくて
R15です。
「マリア、少しは落ち着かないか……」
「きゃっ!」
気持ちを落ち着かせようと深呼吸を繰り返すマリアの背後から、呆れたような声が落ちてきた。彼女は驚きに肩を跳ねさせ、小さな悲鳴をあげる。
「ルーファス……」
「本当に落ち着けよ」
「だって……あなたと同じ部屋だと思うと……ドキドキしちゃって……」
彼女は空色の瞳に、すがるような戸惑っているような複雑な色を浮かべてルーファスを見つめた。
その瞳があまりにも美しすぎて、彼は思わず見惚れてしまい、赤くなりそうな顔を隠すように自分の口元を押さえた。
「マリアは無自覚に煽るから質が悪いな……」
「……?」
「もう何も考えるな。俺に身を任せてくれればいい」
そうして彼女をベッドまで運んで、壊れもののように大切に寝かせた。
「今夜はもうやめるつもりはない。俺に愛をささげてもらう」
マリアは恥じらいながら小さく頷いて、彼の言葉を受け入れる。
2人の間に濃密な雰囲気が漂って、ルーファスがマリアを自分の下に閉じ込めた。彼女も彼の首に手を回して愛しげに引きよせる。
近づく距離と、深くなる口づけ、荒くなる呼吸、ただ抱き合うだけではもう物足りなくて、お互いのすべてを受け入れ、そして与えたかった。
しかしそのとき、愛し合う2人を引き離す無情な音が響いた。誰かが部屋の扉を遠慮がちに、それでも確固たる意思をもって叩いている。
「空気読めよ……」
当初は無視していたルーファスだったが、なかなか扉を叩く音は止まなかった。彼は苛立ったように独りごちて、マリアをベッドに残したまま来客に対応する。
そこにいたのは思いもよらない人物だった。