153 お別れの朝に
R15です。何があったか、ぼかしてます。
レーニエを出れば、今日の夕方にはいよいよガルディア王国の王都シュバルツに到着することができる。デリシーとの別れが迫ってきて、マリアはもう既にさみしくなっていた。
マリアは結局朝までルーファスの部屋で過ごし、明け方に自分の部屋にこっそり戻ったのだが、そこで待ちかねたようなデリシーに声をかけられた。
「朝帰りなんて、マリアちゃんも隅に置けないわね。どこにいってたの?」
「え……あの……」
マリアはルーファスと過ごした、あの煮詰めた砂糖のような時間を思い出し、羞恥に頬を染めた。彼女は昨夜まで恋人どうしが愛を交わす手順をほとんど知らなかったから、あんなことまでされるなんて思いもしなかった。
針をさされた美しい蝶が連れていかれたのは、溺れてしまいそうなほどの恍惚の海で、あられもなく翅を広げた蝶には、その刺激は気を失うほど強すぎた。
口ごもるマリアにデリシーは大人の対応をした。
「ふーん……まあ、聞くのも野暮よね。それよりももうすぐお別れだし、私からお餞別があるの。ソンムで買ったのよ」
そう言って、ピンクの可愛らしい紙袋をマリアの前に差し出す。
「わぁ、ありがとうございます! 開けてみてもいいですか?」
マリアは瞳を輝かせ尋ねるが、デリシーは意味ありげにウインクした。
「私と別れてから開けてちょうだい。あ、でも必ずルーファスがいないところで開けるのよ? いいわね?」
「……? わかりました」
マリアはよくわからないながらも、すっかり姉のように慕うデリシーの言葉に素直に頷く。
「今日でマリアちゃんとの旅もいよいよ終わりね。さみしいけれど、今日1日よろしく頼むわ」
デリシーはいつも通り笑ったが、マリアはさみしさが勝って、上手く笑顔をつくれた自信がなかった。




