150 強制的に拓かれた運命
マリアにとっては可笑しいことなど1つもありはしなかった。能動的に選びとってきたつもりが、男たちの思惑が複雑に絡み合う運命の歯車に、知らぬ間に巻き込まれていたに過ぎなかったのだ。
「でも今回のきっかけがなければ、マリアは結婚についてまだ真剣に考えなかったんじゃないか? 劇薬だったかもしれないが、マレーリー様もお前に発破をかけたかったんだよ。いくら可愛い姪でも、いつまでも手元に置いておくことはできないんだから」
マリアも彼の言葉に小さく頷いた。女性が1人で生きていくのはまだまだ難しい世の中で、いつまでも叔父に頼っていてはいけないのもまた事実だった。
「たしかに私はあのまま家にいたら、きっと今も、恋も含めて何も知らずに生きていたわ」
「お前には不本意に感じられる部分もあるだろうが、俺はこれで良かったと思っている」
マリアはこの旅の中で、初めて恋をして、初めて失恋の苦しみを味わい、初めて恋が実った喜びを知った。それにわずかな間に、色々と強制的に大人にさせられていく自覚があった。
「そうね。それに、これ以上何も起こらないわよね?」
「侯爵もさすがに広大なガルディア王国を何の当てもなしにはさがしにこれないだろう。でもあの手紙がな……」
マリアがエドに書いた手紙のことを思い出し、ルーファスはほんのわずかに眉を寄せた。