148 男たちに振り回されて
「そうよね、私はもうルーファスと国を出たのだから、叔父様のお邪魔にはならないわよね。結果的に叔父様にとっては、お屋敷を侯爵様に差し押さえられたことは良かったのかも……」
そう自分に言い聞かせていたマリアは、胸に何かが引っかかった。
「あ、でも、そもそも……私がルーファスについていくことになったのは、住んでいたお屋敷が借金の形に侯爵様の手に渡ってしまうことになったからよね? 借金の相手を選んだのも、私に家を出るように言ったのも、全部叔父様だわ……」
瞳を不安で揺らして、マリアはルーファスを仰ぎ見た。
「ねぇ、私は家を出ることになったのは本当に偶然だったの……?」
ルーファスは人を疑うことを知らないマリアにしてはよく気がついたものだと思い、珍しく感心する。
「……よく気がついたな」
「そんな……」
「マレーリー様は、いよいよ借金で首が回らない状況になったとき、借金を返すための新たな借金の相手として、侯爵を選んだ。侯爵から屋敷を担保に借金をすれば、屋敷はいずれ侯爵に差し押さえられる。そうしたらマリアを餌にして、侯爵と同棲に持ち込めると思ったんだろう。
金を貸してくれる真っ当な相手はもういなかっただろうが、その前に屋敷を売って借金を清算することもできた。あの屋敷を買ってくれる相手なら他にも探せばいたはずだからな。でもマレーリー様はそうはしなかった」
「……たとえ叶わない恋でも、叔父様は好きな人のそばにいたかったということ? 私は恋のライバルだから……出ていくようにして……」
「そもそもマレーリー様は、叶わない恋だなんて微塵も思っていないさ。あの人の思考は短絡的だから、1つ屋根の下で暮らせば侯爵を落とせると、安直に考えていたんだと思う。夜這いくらいはかけるかもな。
それに侯爵だって、伊達や酔狂でマレーリー様に金を貸す訳がない。マリアを何とかしたい下心があったんだろう。結局マリアは周りの男たちに振り回されただけだ」