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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第4章 ガルディア王国前編
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134 道中の会話(レーニエまで) 1

「マリアちゃんが元気になった今となっては、ソンムの街は楽しかったわね。買い物や観光。立派なお屋敷で丁重にもてなされ、豪華な食事においしいお酒……夢のような毎日だったわ」


 デリシーが馬に揺られながら、うっとりと呟いた。たしかに王族の屋敷で接待される経験など、庶民にはそうそうできるものではない。

 マリアの容態が峠を越えてしまった後、デリシーは特にすることもなかったので、これ幸いとソンムでの毎日を堪能したらしい。


「のんきだな」


 病床のマリアに常に付き添っていたルーファスは、デリシーほどソンムの街を楽しめなかった。


「ふふふ……ルーファスったら、マリアちゃんのこととなると動揺しちゃって、マリアちゃんにも見せたかったわ」

「……そんなに、心配してくれていたの?」


 幌の中から顔を出していたマリアは、ルーファス顔を遠慮がちに窺った。心配させてしまったのはもちろん心苦しいが、なんとなくくすぐったい気持ちもする。


「当たり前だろ」


 ルーファスは素っ気なく答えただけだったが、こういうときの彼は照れているだけだと、最近のマリアはわかるようになった。


「それはそうと、私は王都についたら、すぐにあなたたちと別れるわ。早く店に顔を出したいのよ。アンダーシュバルツにでも行かない限り、ルーファス1人でも充分よ。イザーク様のお屋敷に滞在させていただけるみたいだし。アンダーシュバルツにはマリアちゃんを連れて行かないでしょ?」

「ああ。あそこはマリアが行って良いところじゃない」


 マリアは2人の会話を聞いて、デリシーとは王都で別れなければいけないことを急に実感した。いつの間にかマリアもデリシーのことを姉のように慕うようになっていたので、さみしい気持ちが胸にこみ上げる。

 でも経営している小料理屋のことが気になるデリシーの気持ちもわかるので、マリアは何も言えなかった。


 ふとマリアは、またデリシーの口から出た「アンダーシュバルツ」の単語が気にかかった。

 野盗との激戦の中で、デリシーが叫んでいたのだ。「アンダーシュバルツにいた頃と何も変わらないわ」と。

 マリアは聞くなら今しかないような気がした。


「2人はアンダーシュバルツにいたの?」


 マリアの質問に場の空気が変わった。

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