134/295
133 旅の再開
マリアが医師から旅の再開の許可を得た頃には、ソンムに逗留してから、早いもので1ヶ月あまりが経過しようとしていた。
いよいよ出発の日がやって来て、イザークとオーランをはじめ、屋敷の使用人たちも総出で見送ってくれた。
「私たちは用事を済ませてから追いかけるよ。すっかり足止めさせてしまって申し訳なかった。道中、気をつけて」
イザークはマリアたちと順に軽く抱擁を交わした。当初イザークは彼らに身分までも明かす気はなかったが、マリアが身を呈して彼を救ったことで状況は劇的に変わった。今や彼らは身分を越え、互いに厚い信頼関係を築くことができていた。
「こちらこそ、またシュバルツで会いましょう」
そう返したルーファスの言葉にイザークは力強く頷く。
そうしてマリアたちはタンガロイ湖の南の街レーニエを目指して出発した。レーニエまで行ければ、王都シュバルツは目前だった。