125 (エド視点) マリアからの手紙 2
今、俺にできること、それは無事に王立騎士学校を卒業できるように勉強することだ。卒業すると騎士団に配属されるが、その前に長期休暇がある。間に合うかどうかはわからないけれど、マリアを追いかけるのはそのときしかないと思った。
俺は勉強が苦手だが、マリアのためならどれだけでも頑張れる気がする。マリアからの手紙を心の糧に、いつもは眠くて白目を剥いているアストリア史の授業も、赤点しか取ったことのない法律の授業も、かつてないほど真面目に聞いた。マリアからの手紙を胸のポケットに忍ばせて。
でもうまくいかないもので、王立騎士学校の生徒の数人かが、王権打倒を目論む革命勢力に加担していたらしい。その日の夜、身体検査及び尋問、部屋の捜索が行われたのだ。教師や学生ひとりの例外もなく、徹底的に。
その結果、大切なマリアからの手紙も没収されてしまった……。どんなに違うと言っても、聞き入れてもらえるはずもなく……。
俺はノンポリだから寝耳に水だったけど、革命の尖兵として利用するため、騎士の卵たちを仲間に率いれる工作が秘密裏に行われていたらしい。
学生と革命勢力との連絡は、家族や恋人からの手紙を装った何気ない手紙に、暗号を潜ませて行われたとのことで、特に個人宛の文書は徹底的に調べられた。
たしかに身分を問わずに、栄光あるアストリア騎士団に入れるとはいえ、貴族の子弟が優遇されているのは間違いなく、その不条理に憤る平民出身の学生も多かった。その不満を利用すれば、革命勢力としては付け入る隙も多いんだろう。
「たった1日で、マリアからの手紙が没収されるなんて……」
国家の危機という一大事においては、仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。俺も頭ではそう理解していたが、それでも落ち込む気持ちは到底抑えきれるものではなかった。
俺は力なく呟いて、ショックでベッドに倒れこんだ。