107 偽らざる本心
気を持ち直したデリシーは、意気揚々と先に寝る準備を始めた。さすがに今日は疲れているようで、そう時間を置かずに規則正しい寝息が聞こえてくる。マリアたちもデリシーのすぐそばに寝る場所を整えた。
「旅は賑やかな方が楽しいわよね? それにお2人とも真面目そうな方だったわ。ルーファスもそう思ったから、承諾したのでしょう?」
マリアは声を潜めてルーファスに話しかけた。
「ああ、それなりに信頼して良いと思う。しかし、おそらくイザーク殿はお前を女だと見抜いた……惚れられないようにしろよ」
そう言って彼は隣で寝ているマリアの頭を、自分の胸に引き寄せた。
「もう……ルーファスったら、何を言っているの。イザークさんにも好みがあるわ。勝手にそんなことを言ったら失礼よ」
自分の美しさに無自覚なマリアは珍しく真剣にルーファスを窘めた。そういったところも彼女の魅力のひとつかもしれないが、彼がそんな彼女の危うさに手を焼いているのも事実だった。
「でもルーファスは、私がほかの男の人を選んでも構わないって言っていたのに、少しは気にしてくれるの……?」
血に染まったルーファスを何の躊躇いもなく受け入れてくれたマリアを、彼はより一層手放せないと思うようになっていた。紺碧の瞳に熱をのせ、マリアに偽らざる本心を伝える。
「当たり前だろう。本当はマリアを失いたくない。ほかの男には指1本触れさせたくないし、俺がマリアを幸せにしてやりたい」
彼女の柔らかな髪を撫でながら、愛おしい気持ちを隠しもせずに、彼は甘く囁いた。