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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第4章 ガルディア王国前編
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106 弱気なデリシー

 ルーファスとイザークは、明日の出発の時間等の簡単な打ち合わせだけを済ませ、今日のところは別れた。


「慎重なあなたにしては、あっさり決断したのね? 確かにあの2人は腕に覚えがありそうだし、一緒に行けるのならありがたいとは思うけれど……。あなたはマリアちゃんに他の男が近づくのは嫌じゃないの?」


 デリシーは3人だけになるとすぐにルーファスに疑問をぶつけた。


「マリアには俺がついているから大丈夫だろう。それに、デリシー……お前が一番わかってるんじゃないのか? 彼らがいれば今後はかなり楽になるはずだ。お前はしばらく無理をする必要は無い」


 ルーファスの言葉にデリシーは驚いたように目を見開いた。


「……ごめんなさい、やっぱりわかっちゃうわよね。確かにその通りよ。しばらくは今までのように戦えないわ……」


 彼女は悔しさのあまり、血が滲むほど強く唇を噛んだ。


 デリシーは今日の戦いで負傷したが、怪我自体はどれも大したことはなかった。問題は敵に捕まって命の危機にさらされたことで、死の恐怖にいまだに囚われていることだ。このような状態で戦っても足手まといになるだけだろう。

 しかし例えそうだったとしても、デリシーの奮闘は充分に称賛に価するものだと考えていたルーファスは、珍しく落ち込む彼女に精一杯の(ねぎら)いの言葉をかけた。


「デリシーがいてくれたから、俺たちはこうして今も生きている。謝る必要はまったくない。むしろ感謝している」


 ルーファスの優しい言葉にデリシーの目に涙が浮かんだ。あの極限状態の戦いの中、ルーファスがデリシーの盾となって剣をふるっていたことは彼女にもよくわかっていた。だから彼は、彼女の分まで敵の返り血を浴びたのだ。それなのにデリシーはルーファスが最も嫌がること、つまりマリアに血まみれの彼の姿を見せてしまった。


 幸いにもマリアはそんなルーファスをあっさりと受け入れたようだが、デリシーは狭量な自分をあさましく思い、せめてもの償いにある決意をした。


「これからお姉さんは、あなたの幸せのために頑張るからね!」


 そう熱く宣言し、彼女は鼻息荒く拳を握った。

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