103 デリシーの好み
保険でR15です。BLとまではいきませんが、多少そういう要素があります。
身体を清めたルーファスが旅人の小屋に入ると、皆の視線が一斉に彼に集まった。野盗たちを殲滅させたという噂がすっかり広まっているようで、勝手なイメージを持たれていたのであろう。ルーファスが意外と若く男前であったことや、マリアとデリシーを引き連れていることに驚いている者が多かった。
「そんな坊やとお姉ちゃんを連れて、1人でよく野盗から守りきれたものだな」
この小屋の管理人が、マリアとデリシーを見ながらルーファスに話しかけた。特にマリアを上から下へと舐めまわすように見るので、ルーファスはその視線から守るため、咄嗟に彼女を自分の背後に隠す。
「1人ではない。こっちの黒髪の女も5人は倒してる」
「……! それはすごいな」
管理人は小さな目を驚きで丸くした。周りはルーファスと管理人の会話に聞き耳を立てていたので、デリシーに自然と注目が集まる。
「それより今日はここに泊まりたい」
ルーファスもさすがに戦い疲れて、今夜はとても野宿はできそうになかった。女子ども連れは危険だが、周りは今ルーファスのことを恐れているし、デリシーが強いこともさりげなくアピールしておいたから大丈夫だろう。もちろんマリアはルーファスのそばから離さないつもりだ。
旅というのは欲求不満の男所帯が多いためか、予想以上に美少年「マリク」狙いの輩が目立つ。当のマリアはまさか男装している自分が狙われているとは夢にも思っていないようで、相変わらず無防備だ。
旅人の小屋は一階が休憩所で二階が宿泊所となっている。飲食の提供はないので、各自持参した携行食を食べるのだが、テーブルと椅子があるため、ここで食事をとる者も多かった。そのため混み合っていて、隣のテーブルの声も聞こえない。
席につくとデリシーが周りを見渡しながら呟く。
「あの子、かわいいわね」
「……怪我もしているし、さすがに今日はほどほどにしておけよ」
ルーファスがデリシーに呆れたように注意した。デリシーの視線の先には、柔らかそうな茶色の髪の、まだ若い優しげな青年がいた。
「デリシーさんは優しそうな方が好きなんですね」
マリアはデリシーの視線の先を見て、正直な感想を述べる。
「そうよ。私が手取り足取り、色々なことを教えてあげたいの。だから年下の可愛い子がいいわ」
そしてルーファスの方をちらりと見て、憎たらしいくらいの良い笑顔で言った。
「マリアちゃん、安心してね。いくら年下でも、ルーファスみたいな可愛げがない冷血男は昔から全然好みじゃないから」