102 不埒な想い
R15。ヒーローは色々な経験をして、今の性格になっています。一部に過去の経験を匂わせる描写があります。潔癖な方は読まないでください。
「早く血を洗い流したい。申し訳ないが、少し離れてくれないか?」
「そうよね……ごめんなさい」
ルーファスに言われて、マリアは名残惜しそうに身体を離した。
「お洋服を洗うの、手伝ってもいい?」
ルーファスが脱いだ服を手渡すと、マリアはすぐにその場で洗い始めた。
弾む水音に、やがて混ざる視線。上半身裸になって血や土を洗い流していたルーファスが、ふと顔を横に向ければ、マリアが惚けたようにこちらを見ていた。彼女の手はすっかりお留守になっている。
何かあるのか問うてみれば、マリアはハッとしたように顔を背けただけだった。
慌てて動かされる手と朱が上る白い頬が目に入り、ルーファスは口元を緩める。そのほんのりと染まる頬の赤さを茜色の空のせいにするには、彼女の態度はあまりにもぎこちなかった。
(マリアは男の裸もまともに見たことがないんだな……)
ルーファスは今更ながらマリアの初々しい反応に驚いた。この程度で恥じらう恋人が可愛いらしくて堪らない。
ルーファスはマリアの服の下に隠された瑞々しい魅力的な身体を、ある程度は知っている。カヌレやアーデルハイムでそれらしい行為をしてきたからだ。
しかしルーファスの方は、そういった場面でも服はきっちり着たままだった。肌と肌を直接合わせてしまえば最後、自制心なんて容易く崩れ去ることはわかりきっている。
マリアは今まで、男性の裸なんてほとんど見たことがなかったので、その彫刻のような鍛え上げられた逞しい身体に一瞬にして目を奪われてしまっていたのだ。自分の内側に熱が灯ったような感覚がして落ち着かない。身体の奥が甘く疼いた。
ルーファスに蹂躙されてみたい。
そんな不埒な想いをごまかすように、マリアは一心不乱に洗濯をし続けた。