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没落令嬢は護衛騎士と旅に出ます  作者: つきのくみん
第4章 ガルディア王国前編
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99 (野盗視点) 悪魔のような男

R15。残酷なシーンがあります。ヒーローが無慈悲なので、気分が悪くなる方は読まないでください。

 俺は我が目を疑った。百戦錬磨の俺たちにとって、楽に勝てるはずの戦いだったのに、21人もいた仲間たちが次々と倒されていく。相手はたった2人の若い男女だ。襲う前には念のため、2人の様子を観察していた。隙のない身のこなしからして、ある程度は戦いの心得があるとは予想していたものの、まさかこれほど強いとは思ってもいなかった。

 残りの仲間はあとわずか……3人しかいない。


 いつも通り、まず男を殺し、残った女は慰みものにする予定だった。もちろん馬車ごと荷物をいただくのは言うまでもない。

 しかし、男の方が人間の皮を被ったとんでもない化け物だったことで、状況が一変した。男は自分たち以上に冷酷で、一切の感情の見えない瞳で、次々と仲間たちを(ほふ)っていく。最初からこちらを殺すつもりのようで、血しぶきを浴びて血まみれになっても、その男はまったく気にもとめていないようだった。絶望的に強い。


 ついに残り2人となり、その男の剣が自分に向いた。俺が思わず死を覚悟したとき、仲間が女を捕らえ、その男に見せつけるように引きずってきた。

 美しく強いその女は、今はすでに戦いで疲れ果てているようだった。しかしそれでもその女は、こちらを鋭い瞳で睨み付けてくる。俺たちは強い女が哀れに許しを乞う姿を今まで何度も見てきたが、それはとても劣情をそそられるものだった。


「この女の命が惜しければ剣を捨てろ!」


 女の首筋に剣を突きつけたまま、勝ち誇ったかのように仲間が叫んだ。どんな人間でも仲間が人質になれば、隙ができるものだ。女も無様に泣き喚いて命乞いをすればいい。そうすれば女だけはたっぷりと可愛がってやろう。


「勝機が見えた」そう思ったとき、男は驚くほどの低く冷めた声で俺たちに言った。


「好きにしろ」

「「!」」


 その男の言葉に俺たちの方が愕然とした。俺たちは仲間をとても大切にしていたから、野盗の自分が言うのもおかしいが、この男は人間ではなく悪魔ではないかと思った。

 現に今もその男の顔には一切の動揺も浮かんでおらず、能面のように無機質だった。それが本当にそら恐ろしく感じ、背中に冷たい汗が伝う。


 そのときだった。捕らえられていた女が突然狂ったように笑い出した。


「ははは……はは、ルーファス、あなたはアンダーシュバルツにいた頃と……何も……何も変わらないわ!」


 そして一息ついて叫んだ。


「そういうところが本当に、ムカつくのよ……!」


 女はどこにそんな力が残っていたのか、仲間の鳩尾(みぞおち)をうち、その腕から逃れた。その隙を逃さず、ルーファスと呼ばれた悪魔のような男が、よろけた仲間の頸動脈を切った。また辺りが鮮やかな血に染まる。


 俺は今度こそ本当に、自分の死が近づいていることを悟った。血を滴らせた剣をもって、悪魔が一歩一歩近づいてくる。悪魔は無駄のない動きで剣を一閃させると、俺は意識を永遠に手放した。

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