第3話「少年少女と、鋼の巨人」
今回も訂正入れました
ラムネ片手に景色を見なていた、3本目のラムネに手をかけたとき。
「悠君」
「なんですか?吉川さん」
「ラムネ飲みすぎ、渋滞にハマって、その時に腹痛起したらどうしようもなくなるぞ」
「あ、はい・・・気をつけます」
流石に言われてしまった。
仕方ないのでラムネをしまった。
車に乗り、高速道路へ入ってから途中で買ってきたラムネと菓子を食べつつ富士市へ向かっていた。
そう言い、窓から見える後ろへと流れていく景色をずっと眺めていた。
「・・・絶対に変わってやる・・・」
そう、小さな声で、つぶやいた。
「何か言ったかい?」
「いや、何も」
だが、その時だった。
「はい、吉川ですが・・・はぁ!?アンノウンが出現した!?」
「うわっ!?急にどうしたんですか!?」
吉川の鬼気迫る表情を見て悟った。
何なのか分からないが、恐らく、とんでもなくやばいことが起きたんだろう。
アンノウンってのが分からないけど、大方、敵なんだろうな。
「・・・敵、来たんですか?」
「あぁ・・・そうだ現在配備されているエクスマキナ1号機、2号機、6号機のうち、1号機と、2号機が出撃するそうだ」
「エクス・・・マキナ?しかも6号機?3号機から5号機は無いのですか?」
「あぁ、ここには配備されてないからな・・・」
「なるほど」
「君は、6号機のパイロットとして、頑張ってもらうよ」
「6号機ですか、頑張ります!」
他の機体の人はいったいどんな人だろ・・・。
カッコいいだろうなぁ…ロボットのパイロット・・・少年なら一度は憧れるもんだ・・・。
そんな思いが彼の中に満ち溢れていた。
夢を思い描く少年のように。
彼の顔には自然と無邪気な笑みが浮かんでいた。
だが、吉川はそんな彼を見て、自分が情けなく思えた。
私たち大人は本来子供たちを守らねばならないのに、子供たちを戦場へと送り出すしかできないなんて・・・。
どうしようもない思いが、彼の中を駆け巡った。
だが、唐突にそれは中断される。
突然急ブレーキがかかり、少し前につんのめりかける。
「なんだ突然!何があった!」
「よよよよ吉川さん!?ままま、前をみてくだださい!」
言われたまま見てみると、そこにあったのは・・・。
「なんで・・・ここにアンノウンが出現したんだ!?」
「あれが・・・アンノウン・・・敵・・・!?」
青空に見えたのは、真っ黒で巨人のような巨体に、二つに割れたお面の下からのぞかせるギョロっとした目玉。
ニタニタと笑っているようにも見える口のような部分。
そして、異様に長く、鋭利な指・・・。
明らかに、この世に非ざる者と、嫌でも思えた。
テレビでよくある未確認生命体とかUFOとかそういうのをやったり、ネットでよくそんなオカルトな話があったりするが、生きてこの目で見るなんてあって欲しくなかった・・・。
今時ゲームやイラストでそんなものよく見ていたはずだが、実際見てみると怖くてたまらなかった。
「な、なんなんだあれ・・・あれが・・・敵なんですか・・・」
「怖いか、竜崎君、しかし、君はこれからあれみたいなやつと戦わないといけなくなる、私たちがサポートを全力でする、だから・・・頑張ってくれ!」
「は、はい!」
逃げたい、心の底から逃げたい、けどどのみち逃げ場はないんだ、
これから先、こんな怖いものと戦わなきゃいけいのだから・・・。
「吉川さん!すぐにここから離れます!もうすぐ1から2号機が来ます!ここにいたら戦いに巻き込まれますよ!」
「あぁ!わかった!車じゃもう無理だ、徒歩で逃げるぞ!」
「は、はい!」
すぐさま車から降り、俺は逃げ惑う人たちに巻き込まれながらも無我夢中で、走った。
途中、何度も転んだりしたが、そんなこと言ってられない、すぐに立ち上がって走る。
頭の中は真っ白だった、それでも恐怖は沸いてくる。
「やっと2号機が来たぞ!」
吉川の声を聞き、空を見上げると。
空に浮かぶ巨大な輸送機から、黄色と、白に配色された、巨人が落ちてきていた。
「で、でけぇ、あれがエクスマキナ・・・」
「2号機が来た!もっと走るんだ!」
その時、運転手をしていた吉川の部下の昭島と、吉川のスマホから着信音がする。
「は、はい吉川です・・・どういうことです!?ここでですか!?」
「よ、吉川さん・・・司令部から指定ルートへ6号機パイロットを輸送せよと・・・」
「俺も聞いた、昭島、行くぞ・・・畜生、本部め・・・子供をなんだと思ってるんだ・・・」
いきなり乗れってこと!?。
そんな、操作もできるか分からない子供になんという無茶ぶりを・・・。
「俺・・・そんなすぐに動かせれるのかな・・・」
「本部も本部で焦ってるのさ・・・少しは冷静になってほしいよ・・・」
「でも、それをやって見せなきゃ、俺が呼ばれた意味は無いからね、やりますよ、えぇ、やってやりますよ!」
もう半場ヤケクソだった、だがそうでも無きゃやってられなかった。
「よし分かった、本気で走れ!お前ら!」
「はい!」
そして、彼らは逃げる人々とは逆に、アンノウンのいる方へ走り出す。
「ここの点検用ゲートから下に降りれる梯子がある!気を付けて降りろよ」
「はい!」
ゲートを通ると、金網状になった床と簡易的な柵がついた高速道路の真下のところへ出た。
降りたとこから数メートル先に梯子が下がっていた。
「俺が先陣を切る、二人は俺の後をついて来い!」
そう言い、梯子のロックを外し、流れるような速さで梯子降りて行った。
言われるがまま、悠たちも降りていき、地面へと降りた。
やっと地上に降りてみたのは。
「なにこれ・・・?家が・・・ビルが・・・みんな崩れてる!?」
そこにあったのは、むき出しのコンクリートから出る曲がった鉄骨、へし折れた看板、血だまりのできたアスファルト、肉塊となった人間だったものだった。
「よよよ!?吉川さん・・・あああああれ・・・人が・・・!?」
「昭島!お前がうろたえてどうする!悠君はなるべく見ないようにするんだ・・・」
「うっ・・・気持ち悪い・・・」
一瞬で、余りにも生々しい光景が目に焼き付き、目の前が真っ暗になりそうになる。
「それでも走るんだ!」
そう言い、昭島さんが俺の腕を引っ張っていく。
そのまま何度も来る吐き気と戦いながら歩き続け、なんとか指定されたポイントへ来た。
だが、まだ機体は来ない。
「なんなんだよ!呼んでおいて、遅れるって!」
昭島が怒りを露わしてに叫ぶ。
「もうすぐだ・・・!もうすぐ来る!」
そして悠は、遠目からでも十分見える、アンノウンと2号機の戦いを見ていた。
どうやら、余り状況は芳しくないようだ。
2号機が装備したライフルで、応戦しているが、致命傷を与えた様子もなく、
何度もアンノウンが2号機に爪で切り裂こうとするという、ジリ貧な状態だった。
「やばいぞ・・・あのままだと、2号機の弾が尽きるて、詰むぞ!?まだなんですか!?吉川さん!」
「もうすぐ来る!1号機も応援で来るそうだ!」
「早く!あのままだと2号機がもたないです!」
「・・・頑張って・・・二号機のパイロットさん・・・」
今は、2号機をただ見守るしかなかった。
「何なのですあれ!いくら撃ってもまったくダメージが入った様子が無いのです!」
2号機のコックピット内で、悲痛な叫びをする少女がいた。
彼女は七瀬詠美、人類初の最初のエクスマキナのパイロットだ。
「もうマガジンが一つしかない、落ち着くのです、落ち着くのですよ私、私は負けないのです、私は・・・みんなのヒーローなのです!」
操縦レバーを握る手に力が籠もる。
「さっさと終わるのです!」
彼女はひたすらアンノウンに、弾を撃ち込む。
必ずアンノウンに勝つと信じて。
「怖いよ・・・いきなり戦闘なんて・・・呼び出されいきなりロボットに乗れなんて・・・無茶苦茶だよ・・・
あんまりだよ・・・」
そのころ、1号機の方でもコックピットの中で一人の少年が震えていた。
彼の名は、月白宗也、彼もまたエクスマキナのパイロットに選ばれた者だった。
操縦レバーを握る手が震える。
背筋に寒気を感じて、呼吸が荒くなる。
「落ち着かなきゃ・・・落ち着かなきゃ・・・!」
「宗也くん落ち着いて、大丈夫、あなたならできる・・・大丈夫」
オペレイタ―のノイズの混じった声で少し落ち着きを取り戻した。
「やるしかない・・・やるしかないんだ・・・!やらなきゃみんな死んじゃうんだ・・・!」
まとわりついてくる恐怖を何度も払いつつ、まっすぐと、これから戦うことのなる、アンノウンを見つめていた。
「来た!あれだ!」
昭島が指さす方を見ると、先ほど2号機を運んできた輸送機と同じような輸送機が来ていた。
一機がこちらの上空でホバリングしてると、また吉川のスマホから着信音がする。
「はい、吉川です・・・了解です、青空君!もうすぐ輸送機から私たちを回収するロープが降りてくる!それで上空の輸送機に行くぞ!」
「え、えぇぇぇぇっ!!」
そういってる間に上空から数本のロープが降りる。
ロープの先端にある救助用固定ハーネスに体を固定してもらい、上に引っ張り上げられた。
そうして輸送機に上がると。
「よく来た!これつけて、すぐに機体に乗ってくれ!」
上がってすぐに迎えてくれたオペレーターのような服装を来た人が手に持ってた、青いバイザーのついたヘルメットを差し出す。
「そ、操縦方法も分からないのですよ!?」
「簡単さ!イメージだ!」
「イメージ?」
「そう、レバーを握り、自分がしてほしい動きを機体がするイメージをしながらレバーを握ればその通り動く」
そんなオーバーテクノロジーみたいなのがあるのか。
「は、はい・・・」
言われた通り、ヘルメットをかぶる。
「よし、こっちだ!」
言われてついていくと、真っ暗な部屋の中になんとなく巨大な影が見えた。
「これが、君の機体だ!」
部屋の電灯が一気に灯ると、そこには。
「な、なんだこれ!?でっけぇぇぇぇぇ!?」
「エクスマキナ6号機、これが君の相棒だ」
そこに見えたのは巨大な鋼鉄の背中だった。
「けど、背中しか見えないけど」
「コックピットの搭乗口は背中からだからな」
「すぐ行きます!」
ちょうど、背中の中心あたりに、ハッチからコックピットに入りこんだ。
中は、ほんとにアニメとかで夢見たようなすっきりとしたデザインで、見た瞬間またわくわくしてきてしまう。
「頼んだぞ、少年、君たちが、希望なんだ」
「希望・・・」
こんなこと初めて言われたよ。
嬉しすぎて、思わず顔が二ヤケテそう。
「二ヤけてたら、やられるぞ、気を引き締めろ」
やっぱりなってたよ!
「閉めるぞ」
そう言っておじさんが離れ、ハッチが閉まる。
そして、前のディスプレイには下の景色が見える。
「降下開始まで!カウント!3!2!1!」
もう、逃げれない、逃げたくもない、目を逸らさない。
どんなに怖くても、やるしかない!。
俺は・・・。
「降下!」
「みんなのヒーローになるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そうして、少年と、鋼の巨人が戦場に落ちていく。
8月31日に手直し入れました