4HOLE 間違って女体と入ってしまった!
柵のない牢獄に閉じ込められた!
と、井開洋児と池母聖子の二人は絶望している。
脱出口が開かない、いや、それ以前に現れないのである。
井開の腹部に開いていた元に戻る扉は、依然、消えた状態だ。
「ちくっくっしょう!開け!出て来い!俺たちを閉じ込めたままにする気かーー!!」
井開は己の腹に向かって叫ぶ!まるで芸人の一発ギャグみたいに。
冗談じゃあないと、今度は池母が井開の腹部をいじくり回す。くすぐったり、つねったり、へそのゴマを取ってみたりと様々だ。
「生ぬるいなぁ…」
傍から見ていたスーナ・ナイチンコールは業を煮やし、池母を退かせ、手刀を振りかざした!
「こ、殺す気かァ!!」
二人は焦って止めた。腹に本当の穴を開ける気であることが解ったからだ、彼女の腕力ならそれが出来ることは容易に予想出来た。
「それしかないやん、アナログで開けるしかないやん…」
「アナログの意味、間違っとるわ!!」
「てかあの穴って、デジタルなのか??」
「デジタルって自動ってことやろ?アナログは手動、つまり手で開けるからアナログ」
「………」
デジタルとかアナログとか、そういう次元ではないことは、三人はすぐに気づいた。
日が暮れてきた。冷え込んできた上、ハイエナのような野生動物が集まりだした。
「ありゃ夜行性やな…このままじゃあ食われる、私の家までダッシュだ!
ナイチンコは走った。が、二人が付いていけるはずがない、やむを得ず引き返し、二人の手をつかみ再び走った。遠心力で浮き引きずる事は無いが、腕が抜けそうになった。
「イテテ…勘弁してくれよ…一般人の体の脆さも考えて欲しい…」
とりあえずナイチンコの家に着いたが、二人は文句があった。
「しゃーないやんけ、どーやって運べばよかったんや」
それもそうだと二人は文句を止めた。
こじんまりとした部屋だ。テレビはおろか電化製品などは見当たらない古い日本民家のような雰囲気があった。
「この家は丈夫やし、猛獣は襲ってきいへん…グラッチェも多分大丈夫な筈や」
多分という言葉に若干不安があるが、とりあえずは安心した二人。
「さて、風呂にでも入るか…」
風呂と聞いてドキッとする井開。ここで池母が、
「えっ!?風呂って炊けてるの?」
質問をする。もう喧嘩腰ではないようだ。
「デジタルや…私が入ると自動で炊けるから」
そう聞いて井開は、
「この世界でも、そこまで科学が発達してるのか?」
「か…がく?なんやの?それは」
この世界には流通しない言葉らしい。教える言葉が見つからないし、知ってもらう必要も無いのでスルーした。
「風呂が炊けるとこ、ちょっと見てみたい」
池母は興味あったらしい。
「じゃっ、三人で入るか、広いし」
ナイチンコは誘った。しかし、これが"間違い"な事に、彼女は気付いていない。
「いいっすね、入りましょう」
「別世界のお風呂かァ~、ド〇えもんのしずかちゃんもはいったことない風呂か、いいね」
「いろんな世界の風呂に入っているぜしずちゃんは、お風呂マイスターや」
「でもこの世界の風呂には、入ったことないじゃん、つまり私は、奴を一歩リードする事になる」
「なるんかねえ…してどーする?」
三人はウキウキ気分で、風呂場に向かった。
風呂場は屋外にあった、つまり露天風呂だ。風呂というよりは池という感じだった。しかし水は透き通っている、お湯ではなく水だが…
ナイチンコは血だらけの服を脱ぎ始めた。井開ないし池母まで興奮してしまう、スタイルがいいのは解っているからだ。
「ウヲオオォォォ!!」
思わず二人は唸ってしまった!素晴らしく健康的な肌色、ふくよかな乳房、程よく鍛えた体に細い腰というギャップ、そして引き締まった美尻にモデル足負けの美脚。これには井開の股間は吠えるしかなかった。
気になっていた兎の耳と尻尾は直に生えていた事が解った。この辺は流石異世界人というところだろう。
池母の方もなかなかのスタイルであり、井開のムスコに凄まじい刺激を与えたが、
「ふぅ~」
この低音声の吐息に、井開のムスコは縮んでしまった。声だけは残念、バラドルのように喋ると残念と井開は思った。
この時点でも、疲れからか、女性二人は、そして井開はまだ間違いに気付かない。
ナイチンコが水面に脚をいれ入水し始めた。どうやってお湯にするのか、風呂にセンサーでも組み込まれているのか?と二人は予想していた。
胸まで浸かると、
「ん~きたきた!」
と発言、何が来たというのか?二人は辺りを見渡した。が!何も来ている気配はない。
「ケツにきた~~!」
ナイチンコのこの言葉の瞬間!彼女の真後ろに凄まじい爆発と水しぶきが発生したのだ!
これには流石にビビった!しかし井開と池母のみで、肝心のナイチンコは平然としていたのである。その上、
「沸いたで~~」
とか言ってくる始末である。この言葉に二人は唖然としていたが、なんと!湯気が出てきているではないか!まさか、今の爆発で沸かしたとでもいうのか?あの一瞬で?
しかし、妙な匂いが立ち込めてきたのだ。
「硫黄の臭いじゃあないか」
「こんな臭いだったっけ?場の空気をぶち壊す、用を足した後の便所の匂いじゃん…」
「別世界の硫黄だからな、こんなもんやろ」
池母の疑問を井開が解決した。
臭いも引いてきたので、二人は湯船に浸かった。ちょいと熱い位だが、直ぐに体は慣れてきた。
心地よい、実に心地良い、そう感じ三人は疲れを空気を抜くようにため息に込めて出した。
井開ははっと気付いた、体洗わずに風呂に入ってしまったと。仰天続きで失敗してのだろう、いや、それが問題にならない位の失敗を既にやっちまってるのだが…
「ごめんナイチンコさん…私はあんたに謝らなくっちゃあならない」
池母がこう切り出し、ナイチンコは振り向く。
「あン時私は、自殺を考え、自暴自棄になっていたんだ…人間苛ついてると口も悪くなる…そんで娼婦なんて言っちまって…これじゃあ虐め者と変わらん、最低だ…ごめん」
「ええってええって、こっちも殺そうとしちまったんやし…しかし私の何処がショウフやねん…結婚してるように見える?」
その質問を聞いて、池母ならず井開も疑問に感じた。
「しょうもない夫人って何よ?夫人ちゃう、独身や」
こちらの世界では、ショウフとはそんな略なのかと二人はまた勉強になった。
「私らはんとこは"日本"ていうんだけど、ここはなんていう場所?」
池母が質問、井開もそれが聞きたかった。
「ここか…ぽん日」
「えっ?」
「ぽんにち」
意外な土地名に、二人は思わず笑ってしまった。
「何という偶然!日本の語呂をひっくり返しただけという…」
「"道路"も英語だと"ロード"という、その偶然に通づるものがある」
「そういえば日本語で話してるしな…」
そんな偶然に二人は納得するしかなかった。
「一瞬で風呂沸かしたよね?あの爆弾は凄いよね」
池母がまた質問、このぽん日の文化に興味があるようだ。
「爆弾?そんな貧弱なもんじゃっ沸かせられへん、鍛えられた私の"気合い"や」
「気合い?」
その言葉の意味は、日本人二人はよく知っている。だが、ぽん日のそれは違うと直感した。大声を張り上げるとか、プロレスラーのパフォーマンスとか、そんなものではないと。
「どんなの?」
「力をバッと出すことや。身体能力を上げたり、傷を治したりできる」
最早漫画、ドラマの世界だ。
「風呂も沸かせられるの?」
池母が聞いた。
「熱を噴射させればね。尻の穴からバッとだすねん…」
この言葉に二人はサーっと引いてしまい、苦笑いをした。
「えっ?なに?シリの穴??」
井開は疑問を抱いた顔で聞き返した。
「そ…それって……おならっていうんじゃ…」
池母は怒っている、頭には血管が浮き出ている。
「おならじゃっない!気合いだ!」
「いや、おならじゃん!臭かったしな!あれは硫黄の臭いじゃっなかった!!」
また池母とナイチンコの喧嘩が始まった。そして井開は自動の話しを思い出した。
「そういえばいるな…お湯か水に浸かると屁を出す癖がある奴」
「だから屁じゃあないって…汚いものなど出してない…もし屁だったとしても、雑菌とか熱で死んでいる筈や」
ナイチンコはくさっても看護婦、この位の知識は持ちあわせていた。
「そーゆー問題じゃあない!気持ちの問題だァーー!!」
「勘弁してくれよ!気持ちわりい!うんこは殺菌処理しても食いもんにはなんねえ」
ナイチンコの弁解も空しく砲屁であると疑った二人は、イルカの曲芸並みに勢いよく湯船から飛び出した!
ただ一人温泉に浸かっているナイチンコはふくれっ面だ。
「なーに言ってるんや、気持ちよく浸かってたやん」
「えっ!?」
「勃ってるのが、その証拠や!」
ナイチンコはそう言って井開のタワー状になっている箇所を勢いよく指差した!
「うっ!こっこれは…あんた達の体がセクシー過ぎて…」
井開は素早くタワーを隠した、全力で掌をぶつけてしまったので、折れそうになって痛かった。
「うわ!やらしい!!」
ナイチンコは手を交差し、胸を隠しなおした。
「てか、何で男が入ってんだよ!?」
池母も大事な所を隠し、正論を放った。
「ええ!?混浴だろ?ここ」
「混浴もクソも…元々一人用だし…」
井開は勘違いしていた、というより、気付いていても止められなかったら見たいが為に、入ってしまう性格の男だ。ナイチンコも久々にキレのある突っ込みをした。
「てか、普通に男女が一緒に入るって…」
そして池母も突っ込む。
「どわーー!!超間違ったじゃーん!!」
「何やってんねーん!!」
皆疲れていたのか、初めての異界での体験に気が動転していたのか、この間違いに誰も気が付かなかった。
「気付かなかったあんたらも責任あるで、普通入るとき"キャーッ出てってー"てなるで」
井開は責任転換に入った。
「漫画じゃああるまいし、そんなベタな展開になるか!金玉蹴り上げて、女の裸見ても感じないようにするよ普通」
池母のこの常識感は、漫画よりあり得ない、護身術を習っている女性でもやるかどうかだ。
「そんだったら目玉潰された方がマシだなァ…」
「女の裸、見れないやん…」
「あ!やっぱり金玉がいいわ!」
井開にまたしてもナイチンコの鋭い突っ込みが!井開は即、考え直す。
三人のやり取りを余所に、エンジンの音が…しかし気にする者はいない。
「あ!金玉が光ってる!」
いきなり、何故か井開の股間が発行したのだ!しかも光ってる箇所が顔の形になっている。裸を見られた恨みからか、ナイチンコは変な解釈をし、
「撃てってことやな、よし!」
彼女は両手を重ね、水鉄砲を組み、お湯を井開の急所に撃ち込む、裸を見られた恨みを込めて。
「ち、違っ…お湯かけないで…痛!イタタ!!」
水鉄砲の勢いは相当のものらしく、デットボールを股間に喰らったような痛さだった。
「うっ!きゃあ!」
ここで池母が何か存在に気付いた。バイクだ、しかもかなり派手にデコレーションされてある。しかし、何故か誰も乗ってない。
今、池母は気付いた、風呂場なのに”柵”がないと。だから簡単に侵入されるんだと文句を言った。
「な…なんだ…あのバイクはァ…」
そのバイクのライトがが井開の股間に光を当てている。よく見ると、
「か…顔が…ヘッドライトに…」
なんと!ヘッドライトに、人間の顔のようなものがくっついているではないか!と、いうことは…井開は嫌な予感が…
「グラッチェやな…また珍妙な姿しやがって…」
ナイチンコが急に殺気立った!やはり怪物かと、井開、池母は恐怖する。
「いい趣味とは言えんな…女の裸覗くとは…」
井開が震えながらも、バイクに毒づいた。
「どの口が言ってんだか…」
池母が突っ込む。
「それにゲイかもしれないじゃん…あんたのナニをガン見してたし…」
「そもそも性別なんてあんのか?」
池母の疑問を井開が返す。
バイク怪物はエンジンを吹かし始めた。素人の二人もヤバイと察知出来る程の予兆だ。
「こいつはサバイ!」
ナイチンコが湯船から飛び上がりバイクの前に立つ!エンジンを更に吹かすバイク!女体の乳を、股間を、顔面のライトでなめ回すように照らす。
「やらしい奴や…こりゃあ完全に男やな」
ナイチンコは隠すことはせず、構える!
「サ…サバイって何?」
「最高にヤバイということさ!」
震えながら問うに池母に若干格好つけて答えるナイチンコ。
湯上がりという、無防備な状態の中、空気を読まず襲いかかる怪物グラッチェ、このぽん日という世界が如何に危険か、井開、池母は思い知らされた。