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異世界は不満で溢れてる?なら解決したるわ!  作者: 念平夢
一章 恨みを消す最善な方法
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2HOLE いきなり犯人と決めつける奴はコミュ障!!

 突然、怒鳴りつける親、学校の先生、会社の上司が存在する。

 理由として、いたずらや窃盗、仕事のミスなどを、こちらが犯人と勝手に決めつけて感情のまま怒るのである。

 こういう輩は本当に最悪で、大抵がコミュニケーションがとれない、友達がいない、空気が読めない等、いわゆる”世の邪魔”である。


 井開は今まさに、そんな邪魔な奴に出会ってしまったのだ。

 このナースコスプレ女に、訳の分からない上履きの形をした化け物の本体だと決めつけられたのだ。

 初対面なのだ、襟首つかむ前に、まずは「ちょっとすみません」とつけて訪ねるのが礼儀だろうと井開は思った。

 しかし、この怪物と繋がっている紐のようなものは何だ!これでは疑われても仕様がない。


 井開は殺される状況を打破しようと必死になる。

「まっ、待ってくれ、変な紐が繋がっているからと、俺が怪物かなんて決まったワケじゃあないやん…」

「いやいや、決まってるよ!恨みで出来上がる怪物の元って事だかんね!」

 怪物が何なのかを知り、ドキッとする井開。

「あ!やっべ!俺恨み持ってるわ、虐めてるゴミ共に、すっげー恨み持ってるわ…」

「ほ~ら!やっぱりお前やん…殺そっ!」

 口を滑らせピンチになってしまった!焦る井開!どうする!ここで気付いた!

「せや!俺じゃっねえ!この腹穴の向こう側にいる奴や」

 女の口調が移り、少し関西弁になってしまっている。


「え!?ああ!何で穴が開いとんねん!人間に穴が開いとる!」

「突然開いたねん…こっちも不思議でしゃあない…」

「こん中に、なんか居んの??」

「いるいる、60億くらい」

 井開は世界の人口を述べた、あながち間違っていない。

「え?ビフィズス菌??」

 こちらの世界でも、ビフィズス菌が存在するらしい。

「いや人だ、人だけじゃっない、様々な生物が居る」

「大腸菌とかピロリ菌とか、白いオタマジャクシとかか?」

「精子が居るのは下の方や、いいからちょいと覗いてくれよ」

 業を煮やした井開は腹穴に入ることを勧めた。


「ほわわ!?」

 女は腹穴にスッポリという感じで入ってしまったが、形のいい尻がつっかえた。井開は触って押し込んだ、性欲は多少刺激され、顔がにやけてしまった。

 完全に女が入り、後を追うように井開も腹穴に入った

「なんやここ!?」

「穴の中の、いや外の世界と言ったところか」

 気がつくと二人は、井開の部屋に居た。何故か抱き合ってたので、慌てて離れた。

「ここが胃の中か…不健康そうな…ギョウ虫がいた!黒いな!」

 女が散らかってる部屋を見ての感想。

「ありゃゴキブリだ…いやいや胃の中じゃっねえわ…それに俺はここに居るし…そもそもギョウ虫は肛門にいるんやで…」

 井開はローテンションで突っ込んだ。


 井開には相変わらず腹穴が存在し、触れない紐が部屋の外に伸びていた。女はそれを見て、

「おお!これは…へその緒か!」

「こんな年でそんなの付いてたら恥ずかしいがな…グラ何とかって上履きと繋がってる紐っすよ多分」

 女の天然に、井開は突っ込みながら説明した。

「こいつをたどっていけば…今度こそ真犯人が見つかるかも知れないっす」

 初対面なので井開はちょい敬語で接するようにした。

「よっしゃ行こう!」

 善は急げなのか、女は走って部屋を出た。


 女は家の外に出るなり、

「うわ~!家が並んどるわァ、超都会やん」

「いや、そんな都会じゃっないっすよ、ここは」

 女の住んでいた場所に比べれば、都会らしい。

「ここは、あんたの大腸なのかァ」

「もう俺の体の中ちゃうって」

 女は結構天然らしい。そして、道に落ちているものを発見するなり、

「あーあ、大腸がんになっちゃってるよ」

「そりゃ犬のウンコだから!」

 井開は笑いながら突っ込んだ。


「さあ急ぐで、紐が途切れるかも知れへん!」

 女は走った、井開も追いかける。が、速い!女の走るスピードはジブリアニメのキャラ並みに早い!全力で追いかけるもすぐに息切れ、あっという間に見えなくなってしまった。

「待ってくれ~ィ」

 情けない声で呼び止めるも、答える筈もなく…否、答えてくれた、女は猛スピードで井開に駆け寄った。聞こえたのか、兎耳は伊達ではないらしい。

「遅いわー大腸がんだからしゃあなしか」

「いやあれは犬のウンコ…てか腹に穴が開いているから遅いのかもなァ…」

 井開は腹穴のせいにした、素でも遅いのに。しかし男のプライドが出たのか、女性に格好悪い所は見せたくないと、誤魔化した。

「しゃあない、おぶったる。病人に優しくするのが看護婦の務めやからな」

 女は井開を背負った。幸い腹穴に吸い込まれない、触れない紐も女を貫通して道を示していた。


 井開は走る女にしがみつく、思いの外柔らかい、うなじと横乳の色気がたまらない、乳とか触れたいのはやまやまだが、しようものなら殺される、少なくとも振り落とされるのは確実だ。

 女の尾が座れるように張ってくれている、そのお陰で安定してしがみついていられそうだ。

「看護婦か…あんた戦ってたけど、戦士じゃあないの?」

「戦士も兼ねてる。看護婦だけじゃっ名ァ上げられへん…」

 上昇志向が高いようだ。実のところ、井開もそうである。

「やっぱビックにならなダメっすよね、俺も名を上げるため猛勉強してるんです。馬鹿にしてきた奴らを見返す為にね」

「はは…同士やな…私も家族を見返す為に特訓してるねんで。只の看護婦じゃっ有名な医者である父や姉には勝てへん、やから、敵地にいる患者を助けられる看護婦にでもならなあかん」

「なるほど…型破りでないとあかんという事ですね、専業主婦も働かなきゃ食っていけないみたいな…」

「そうそう、あと強くなきゃ、強盗から子供守れへんもんな」

 走るってる最中、二人は打ち解けはじめたので、

「スーナ・ナイチンコールや」

「井開…井開洋児です」

 自己紹介を済ませた。


 紐は思いの外長かった、10km程あったろうか。だが、ようやく先が見えてきた。

 繋がっていたのは、橋の端に(たたず)み、下の川を眺めているセーラー服の少女だった。

「ナイチンコさん!あの人が本体じゃっないっすか?」

「そうっぽいな、早速仕留めるか」

 ナイチンコは少女に一気に詰め寄り、手刀を振りかざそうとした、その時、

「きゃあ!」

 胸に違和感が!そう、井開が揉んだのだ!

「ちょ!なにすん…」

「ちょ!待って下さい!いきなり殺すんじゃあなく、とりあえず話し聞きましょう」

 井開は後先の制裁のことも考えず、強引な形で制止した、こうまでしないとナイチンコは止まらないと考えたからだ。それはあの少女が悪い奴ではないと直感したからだ。


 少女は悲しげな顔をしていた、そして震えていた。

 井開は嫌な危険な予感がした。

「ひょっとしたら…ヤバイですよ!彼女、自殺するかも知れへん!」

「自殺って、自ら死を選ぶって事かい?何で…」

「怪物は…恨みや不満がで生まれるって言ってましたよね、だから本体はそれらが溜まりにたまって、耐えかねて死を選ぶと…」

 井開には自殺する理由は手に取るように分かる、何故なら彼自身、自殺しようとするまで追い詰められたことが何度もあるからだ。

「やめろーー!!」

 人見知りの性格を抑え、井開は少女に叫び向かっていった。

「来ないでーー!!」

 少女は叫んだ!二人は驚いた、叫ばれた事でではない、その”声”にである。


 少女の声は、低かった。と、いうか声質が女性とは言い難いものだった。

「なにーー!!オカマァ?」

 井開とナイチンコが同時に叫ぶ!

「違うわーーボケェーー!!」

 少女は叫び返す。

「すんません…ニューハーフでしたね」

 言葉を訂正し謝る井開。オカマは黒人に対して”ニガー”と言っているような差別言葉だと思ったのだろう。

「ひょっとして…飛び込み自殺しようとしとるん?」

ナイチンコの質問が入った。

「ああ、そうだ、死んでやる…もう…たくさんだ!」

 少女は泣きながら答える。ナイチンコは川を見るなり、

「確かに…あの中に入れば、きれいさっぱり溶けてなくなるやろうな…井開くんの胃液だもんな…」

「いやいや俺の体のなかじゃっないから…てか、いつまで勘違いしとんねん…それにさっきは大腸の中っつてたじゃん…」

 このやりとりに少女は訳が分からず、ポカンとしていた。

「なるほどな…死んで今度こそ、女に生まれ変わろうとしてんねんな」

「死なずとも、タイかどこかで手術してくればいいじゃあないすか」

 ナイチンコ、井開と続けざまに言われて、遂に少女は、

「バカヤロー!!あたしゃれっきとした女だ!こんな声してっけど女じゃーー!!」

 激高して泣き叫んだ。


 二人は信じられなかった。このような低音の声を女性は前例にない、ましてや成人していない少女である。

「分かったぞ!幽霊が取り憑いているんだ!」

「ポルターガイストかよ!」

 井開は非常識な答えに少女は突っ込む。

「ひょっとしたら吹き替え?」

「映画じゃあねーだろここは!」

 またも井開は可笑しな答えを出した。

「痰が絡んだってレベルやあないな、スライムでも絡んだんじゃっないの?」

「RPGじゃあねーだろ!」

 今度はナイチンコがボケてきた。彼女が来た世界にはそんなのがいるかも知れないと井開は思った。

「栗をそのまま丸呑みにし…」

「もうお前等の大喜利はもういい…」

 少女は業を煮やし、ナイチンコの回答を止めた。

「病気だよ…病気でこんな声になっちまったんだ…そのせいで酷い虐めに…」

 少女は涙流しながら正解を述べた。


「許可する!」

 いきなりナイチンコが喋った。

「自殺を許可しよう、そんなに苦しいのならば死んだ方が楽やろ、こちらとしても助かるし」

「なにィーー!何だァーーこのコスプレ娼婦はァーー!!」

 ナイチンコの心ない言葉に、少女はキレた。

「なにィーー!娼婦やとォーー!!てめーは死のうとしてたんとちゃうんかーーい」

「ハアーー?何でてめーに許可もらわなくっちゃあなんねーーんだよ」

 当然口論となった。井開は止めようとしても止められない。

「もうええ!この私が殺しちゃる!」

 遂にナイチンコは、拳を振りかざそうとした、その時!

「ちょちょっと待ってくれ~~!」

 井開が二人の間に割って出た。

「この人を殺しても事件は解決しない、死んでもだ!」

「なんやて?だってこいつが本体…」

「違う!本体は別の所に居やがるんです!」

 井開の必殺技を出すような激しい口調に、ナイチンコは止まるしかなかった。

 本体じゃあない?じゃあ誰が?何処に?ナイチンコは疑問に思った。井開はどう推理したのか?


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