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日々鍛錬

 まあ、実際問題として未だ元服前の俺は、ここ河内玉櫛荘の養父の館に住まわせてもらい、養育されている身で、できることは正直いえば少ない。


 だから俺は肉体の鍛錬と学問や兵法の習得に今は力を注いでいる。


 平安時代末期の治承・寿永の乱の時や室町時代の応仁の乱以降のような内乱状態というわけではない現状ではそこまで急いで行動する必要性もない。


 下手に六波羅探題などに目をつけられて、面倒なことになっても困るしな。


 まあ、むしろ楠木は河内和泉周辺の反幕府的な御家人を掣肘するために送り込まれた訳でこの後幕府のために働かされることになるんだが。


「よおし、来い!」


「行くぞ!」


 今は神宮寺太郎、のちの正師と相撲や組討を行なっている。


 この時代平安末期のように個人の武勇で戦局が左右されるようなことはないが、なんだかんだでこういったことは必要だ。


「うおりゃ!」


「ぬおっ!」


 俺は盛大に投げ飛ばされた。


 なんとか受け身を取ったが痛いことには変わりない。


 暫く地面の上に横たわった後俺は立ち上がってホコリを叩いた。


「やれやれ、やはり太郎には力では勝てんな」


 神宮寺太郎がガハハと笑う


「まあ、俺の取り柄はそれだからな。

 考えるのは俺の仕事じゃない、お前の仕事だ」


「まあ、そうかもしれん、戦のときはお前さんが前、俺は後ろということになるんだろうな」


「東国のカビが生えた武士共なら棟梁が最前線で戦うかもしれんが

 俺達は違うからな」


 俺は頷いた。


「そうだな、もうそんなやり方は古い、とは言え幕府の戦力はまだまだ衰えているわけではないがな」


「じゃあなんで、幕府はお前さんの親父さんを使ってこのあたりの連中を叩かせてるんだ」


 まあ太郎の言うことはもっともだ。


 この時代の河内の守護は北条氏に連なる北条久時が行なっていて娘婿が足利高氏のちの尊氏だったりする。


 彼は河内・信濃・日向・紀伊・摂津の5カ国を兼ねる守護であるが、六波羅探題北方に任じられたあと永仁5年(1297年)に探題職を辞して鎌倉に帰還しそのまま今も鎌倉にいる。


「単純に金の問題かもな」


 そう小規模であっても戦をすれば金がかかる。


 それが何度も続けばなおさらで、鎮圧のための戦というのは全く利益もない。


 だから、小さないざこざの鎮圧は小さな領を持つ御家人にやらせるわけだ。


「まあ、俺達にも得がないわけでもない。

 ある程度武装をしていても不思議ではないと思われるのはそうでないよりはいい」


 俺達は武装交易商人としての側面のほうが農民の領主としての側面より強いからな。


 最近は残念なことに治安は悪くなる一方だ。


 そうなると自分たちの安全は自分で守らななきゃならないわけだが、あまり派手にやると目をつけられる。


 組討や相撲を終えたら水練つまりは泳ぎの練習だ。


 実際荷物を運ぶときは馬を使うよりも大和川や淀川といった河川を船を使って移動することが多い。


 となれば泳ぎも重要なわけだ。


 水練は全身運動としても優れている。


 その他にも馬術や弓術もそれなりにはこなしているが、平野で関東武者と戦ったら負けるのは間違いないだろうな、あちらさんは年季が違う。


 まあ、それはさておいて肉体鍛錬だが、現在の年齢はまだ骨格の成長の時期ではない。


 そういう状況であんまり激しい負荷を体にかけるのは逆効果だ。


 しかし、逆立ちやデングリ返しなどの身体を操縦するための動作をこの頃に覚えておくことは軽業的な動作の習得に有効らしい。


 その他に俺がやっていることといえば現代で言うところのドッジボールだ。


 球には歳を取って働けなくなって解体した牛の膀胱を使ってる。


 地面に木の枝で適当な大きさで四角の陣地を書いて、それなりの人数を集めて2つに分け陣地の中の相手に球を当て中に誰もいなくなったほうが負けという単純な遊びだがこの遊びには身体能力や性格がよく出る。


「よっと、行くぜ、うりゃあ」


「っと、あたるか」


「うわわ、集中して狙うなよ」


 こうして遊ぶ中で身体能力の優れてるやつは将来使えるかもしれないからな。


 まあ、俺はこういうことをしながら寺で学問も学ばないとならんわけだが。


 なかなか大変だ。

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