第8話 気にされない
金棒のイメージは大体鬼が持つような形状だと思ってください。
鬼神だとカミングアウトしたのだが、少し驚かれただけだった。
「鬼神か、それならあの怪力やその他のことが納得できる」
「結構あっさり受け止めましたね・・・」
「まあ、そんなやつはこの世に入るからな」
いるの!?
「世の中にはエルフやドワーフ、獣人、人間、魔族、精霊、神などざらにいるからな。そこまで驚く意味がないんだよな」
異世界とはいえ、そんなにいたのか。
「だって、みんな心はあるだろう?心のないものだったら恐ろしいが、ちゃんと話ができるならそこまで恐れる必要はないんだからな」
正論過ぎて何も言えないな。
「あ、アンベルト!!ラル様と模擬戦したのですか!!」
ライナが風呂からあがってきて来たよ。しかし、きれいになったな。土汚れなんかが落ちて美しくなったよ。
「お嬢さま、一つお知らせがあります」
「なんですか?」
「お嬢さまを助けたこの方、鬼神でした」
「鬼神ですか!道理で人間離れした強さだと思いましたわ!!」
そんだけの感想か。こりゃ別に珍しくもないようなことなんだな。
「しかし、鬼神がなぜこのような場所に?」
「旅をしたかったからさ。そしたらこの場所にいた、ただそれだけさ」
「では、まだ旅をお続けになるつもりですのね?」
「まあな、一応もうここを出てもいいんだが」
別に長居する意味はないしね。せっかく仲良くなれたのになんか残念な気がするが。
「あの、ここを去られる前にあなたの強さを見込んでお願いがあるんですが」
ん?なんだ?
「ラル様も見たでしょう?あのごろつきの男たちを」
ああ、あの腕もげたやつと、表現できなくなった奴と、急所をつぶされた奴らか。そういえばあいつらそのままほったらかしにしていたな。
「あのような者たちが最近この領内に出てきているんです。その原因を調べると、どうやら一つの盗賊団がこの地の近くに住み着いているようなんですが、どうにも強いようで私が馬車でほかのところに援助を求めに行こうとしてあの者たちに襲われたのです。ですから、援助を請うにしてもあのような者たちがいてなかなか他の地へ行くことができないんです」
「なるほど、で、俺にそいつらを倒してほしいのか」
「お嬢さまに頼まれてこのアンベルトも戦ってみたのですが、いかんせん数が多くて撤退したんです。ラル殿、どうかお願いできないでしょうか?」
ま、鬼神だからって無事には済まないだろうが・・・・
「いいでしょう。ここで会えたのも何かの縁、できるだけやってみましょう」
こうして俺はこの地を去る前に盗賊団退治を引き受けたのであった。
・・・まあ、何とかなるよね?
なんか盗賊団たちがひどい目に合う未来しか見えない。