第7話 ジースト領のフォン辺境伯の屋敷
金棒もって、馬車と並走して走る青年・・・・これもはや怪談かな
馬車に並走して走って30分後、俺たちはジースト領のフォン辺境伯の屋敷に着いていた。
「では、私はお風呂に入ってきますのでラル様はどうぞ私が上がってくるまでゆっくりとくつろいでください」
そういうと、ライナは屋敷の中に入っていった。
「お嬢さまが許可されたようだが、このアンベルトはまだ貴公に対しては警戒しておるからな!!その人間並みではない速さと力、いったい何者かとまだ聞いていないからな」
この騎士、見た目も心も硬い人だな。全身甲冑でおおわれているし、声もくぐもっているから男なのか女のかわからないし。武士だったら「ござる」とか言いそうだな。
「俺は先ほども言ったようだけど、ただの旅人だよ。最近旅をし始めたばかりだけどな」
「胡散臭いのだが。ただの旅人にしては持っている物がその武器一つだけとは軽すぎる」
そうだよね、何もなさすぎるもんね。
「だが、まあ悪人ではなそうだな。ならば、貴公の実力を知るために手合わせ願いたいのだがどうだ?」
この人もしかして戦闘狂か?ふつうこんな芋は約手合わせ願うとは思えないんだが。
まあ、別によかったので屋敷の裏にあった練習場とやらで模擬戦をすることにした。
ついでにこれで手加減も覚えるつもりである。この人、全身鎧だから下手しても大丈夫そうだしね。
「貴公の武器はそれでいいのだな?」
「ああ、この金棒で十分さ。そもそも剣なんて使えないからな」
アンベルトは自身の剣を構え、俺は金棒を構えた。アンベルトさんは剣を貸してくれそうだったが、まあ、一応剣道もやらされていたからやれないことはないが、こっちのほうがまだ扱いやすいもんな。
「では、審判はこの執事長のセバスチャンが務めます。お二人ともいいですね?」
「ああ、頼みましたよセバスチャン」
「審判ヨロシク」
しかし、なんかイメージ通りの執事だな。初老の男性で、執事服、整えられた髪形。なんか完璧だな。
「では模擬戦はじめ!!」
アンベルトさんが素早く動き出す。思い鎧を身につけているというのにかなり速い。
だが、こちらは鬼神。その動作は見えていた。
アンベルトさんの剣の軌道をしっかりと見て、金棒で受け止めた。
「ほう、本気ではないとはいえ、受け止めるか。貴公やはり只者ではないな」
「ま、このぐらいできないと身が守れそうにないですからね」
アンベルトさんの剣を受け止めているので、少し強く押し返してみた。
「ぬおっ!?なんて怪力だ!!」
全力で押し返そうとするアンベルトさん。しかし、びくともせずに逆に押し負けていた。
「勝負ここまで!!」
セバスチャンさんの停止の合図が出されて、俺たちは互いに武器を収めた。
「二人とも、あのままでしたらただじゃすみませんでしたよ!!」
少し怒りながらセバスチャンは言った。まあ、その通りだよな。これでもなんとか力抑えていたもん。これ以上アンベルトさんが押して来たら、力加減間違えて吹っ飛ばしかけそうだったもんな。
「ふむ、貴公なかなかの強さだったな。そこまでの実力があるならば、私がいくら警戒しても意味がないだろう。下手したら私が負けていたようだしな」
一応相手との実力差もわかったようである。
「しかし、貴公はいったい何者なのだ?あの怪力、もはや人間ではないようだが、その容姿からしてもモンスターではないようだし、その正体をどうか教えてくれ」
この場合言うべきだろうか?まあ、別に隠したいわけでもないしな。
「俺の名はラル、ただの旅人でもある鬼神だ」
「き、鬼神!?なるほど確かに納得した」
そんなにあっさりとかよ!?
案外あっさり信じられました