第68話 まさかの遭遇
出会いとはわからぬものよ
服屋の一件から数日後、俺たちは今なお旅して歩いていた。目的など特にない旅だが、やっぱりこうして異世界を歩き回ってみると地球とは違うところが多いな・・・。そこが旅のだいご味でもあるが。
「うーん、今日も野宿ですね」
地図を見てソティスが言う。まあ、俺たちは特にどこそこへ行こうなんて明確な目的がないし、野宿は野宿で日本とは違って空がきれいな状態だからものすごくきれいな星空を見れるからな。何座があるのか全く分からないけどな。
「それにしても、ここ最近は町やら村に巡り合っていたけどやっぱ適当に歩くとそう巡り合わないものだな」
「そうですよねー。やっぱりあまり人が少ないのでしょうか?」
この世界全体の人口って地球よりも少ないようだからな。将来的に人口爆発でも起きたりして。まあ、土地の広さとかも地球以上のようだしそこまで深刻ではないかな。
そのまま歩いていると、前方から何やら馬車が来た。
「お、結構豪華な感じの馬車だな」
見た感じどこかの貴族の馬車か?銀色の車体に、金色の防具のようなものをつけた馬がひいている。周りには護衛と思わしき人たちが銀色に輝く鎧を身に着けていた。
「んー?」
タマモがなにやら目を細めた。
「どうしたんだタマモ?」
「いえ、何か見覚えがあるような・・?」
と、いきなり馬車が止まった。
「・・・あ、鬼神様、少し後ろに隠れさせてください」
「お、おい」
タマモが俺の後ろに隠れた。尻尾がはみ出ているのだが・・・・。というか、なにかおもいだしたのか?
馬車の横を通り過ぎようとした時だった。
「・・・そこの者たち、少し止まってくれぬか?」
馬車の中から何やらそう言われた。男性の声である。
「・・・俺たちに何か用でしょうか?」
一応、相手が貴族みたいな感じだったので返事は返しておいた。少なくとも、ろくでもないやつを見たから俺の中での貴族の評価は駄々下がりである。一番初めに合ったあの貴族はまあ別にいいんだけどね。
タマモが俺の後ろに縮こまるように隠れた。だから尻尾が見えているって・・・・。
「・・・その9本の尻尾、タマモか?」
「!?・・・いえ、人違いです」
タマモが明らかに動揺したかのように尻尾をぴんと立ててそう答えた。バレバレだぞ。
「その声、その尻尾、嘘の下手さ。タマモだな」
「・・・そっちはいったい何者なんだ?なぜタマモのことを?」
一応警戒しておく。タマモがさっきからぎゅっとつかんできていて地味に苦しい。胸の柔らかさがあるが、その圧力が結構厳しい。
「おい、このお方をどなただと心得るか!!」
騎士の一人が声を張り上げた。
「いや、知らん。姿が見えない相手をどうわかれと」
「な、無礼だぞ!!」
「いやかまわんよ」
「し、しかし」
どうやら馬車の中の人物は相当地位が高いのか?だが、そんなことを気にしてはいない様子である。
「すまんな。姿を見せぬこちらの方が無礼か。今見せよう」
そういって、馬車の扉が開き、中の人物が出てきた。
「タマモと同じ・・・」
「狐の獣人?」
「この色は同じ銀狐じゃな」
出てきた人物は、狐の獣人で、しかも色的にタマモと同じ銀狐の人間で言うなら40代後半ぐらいの見た目の男性だった。尻尾の数は一本だったが。
「わたしの名前はフエン・ランタン・ガータナック。獣人国家アンケロスの王をしておる」
「「「「「はあっ!?」」」」」
タマモを除く全員が驚いた。獣人国家アンケロスは実力主義の国。一応どこにどの国があるかちょっとみんなに教えてもらっていた。つまり、この目の前にいる銀狐のおっさんがその国一番の実力者ということになる。
「そんでもって、そのタマモの父親だ」
「「「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」
あっけからんと言ったその国王の言葉に、この日一番俺たちは驚くのであった・・・・。タマモは何やらばつが悪そうな顔で尻尾と耳を丸めていたのだがな、ちょっとかわいかった。
え?なんで王様の子供が奴隷とかになっていたの?




