第6話 騎士アンベルト
オークってよくこういった世界だと食べられるよね。
森で何とか一夜を過ごした翌日、俺たちは人がいる場所を求めて森から出て歩いていた。
「つ、疲れましたわ・・・」
「大丈夫かよ?つらいなら休むか?」
「いえ、私の両親が探している可能性がありますので、その捜索隊に引っかかることができればいいのですわ」
結構、ライナは根性がある娘だった。一応、馬車での移動が多かったためか体力は余りない様だが、それでも精いっぱい歩いていた。
「それにしてもな・・・人に出会わなすぎだろ」
かれこれ3時間近く歩いてはいるが、モンスターでゴブリンとかが出るばかりで人っ子一人見なかった。
この世界はもしかしたら人口がそんなにないかもしれないなと思い始めた時であった。
「あ!!いたぞお嬢様だ!!」
その声が聞こえたほうを見ると、少し遠くに人影が幾人か見られた。
「どうやら探していた人たちに出会えたようだな」
「ええ、そのようですわね」
しばしその様子を見ていると、馬に乗った騎士が近づいてきた。
「アンベルトじゃないですか!!」
「お嬢さまよくぞご無事で!!」
どうやらライナの家の騎士のようであった。全身が甲冑で包まれているため顔が分からないのだが・・・。どうやらライナは一発でわかったらしい。なんでだ?
「お嬢さまの馬車が賊に襲われたと聞き、このアンベルト、昨夜から一睡もせずに探しておりました!!お嬢さまのそばにいなかったこのアンベルトをどうかお叱りください!!」
「い、いえ、別にいいのよ。確かに賊には襲われたのですけど、このラル様が助けてくださったのよ」
「ん?あ、横におられる方でしたか」
どうやら俺のことは視界に入っていないようだった。どんだけお嬢さましか見ていなかったんだこの人。
「むう、一見ただの青年に見えるがその武器はいったいなんだ?剣ではないようだが。それに、貴公は何者なのだ?ラルとかいう名のようだが、この気配は人ではないな?」
「アンベルト、この方は旅人のようなのよ。それよりまずは私たちを早く屋敷に戻してちょうだい。昨日から風呂にも入っていないのですよ」
「ああ、このアンベルトはこんな質問をしている場合ではなかった!!お嬢さま、今すぐ迎えの馬車をご用意いたしますのでしばしお待ちください!!それにラルとやら!!貴公への質問はまたあとでいたそう!」
アンベルトという騎士はすぐに馬を走らせ、ものの数分で馬車を用意した。すごい早いな。
「さあ、お嬢さまこちらへ。後、ラルとやら。貴公はお嬢さまと同じ馬車に乗せるわけにはいかないから後から走ってついていってもらう必要があるが別にいいな?」
「まあ、別にいいですよ」
「ラル様、別に私一緒に馬車に乗ってもいいのよ?」
「いえ、そこまで負担にはなりませんよ。貴女を襲ったごろつきどもの相手よりは楽ですので」
「そうですか・・・なら、早く馬車に追いついてきてくださいね?」
ライナが馬車に乗り込み、馬車は走り出した。
「さて、俺も走るか」
この鬼神の体で走ると、いったいどういう風になるかと知りたくもあったところだしね。
馬車が少し離れたところで俺は走り出し、
「な!!貴公どれだけ足が速いのだ!!」
アンベルトが驚愕した声を出した。それはそうだろう。走り出した俺自身もびっくりの速さで走っているのだから。
俺はほぼ馬車と同じ速さで並走して走っていた。これ、下手したら都市伝説の人みたいに見えるかもしれん。高速を走る爺さん,ばあさんの話みたいじゃなかったけ?
それに、いま別に全力を出して走っていなかった。昨日のごろつきどもとの戦闘から考えて、この鬼神の体はどうやらいろいろオーバースペックなところがあるようで、全力疾走したらどうなるかが怖かったのだ。
まあ、馬車と同じ速度で走れている時点でもう化け物じみていることはわかったが。この先、俺平穏で生きられるかな・・・。
「そこまで早く走れて、そのうえ息切れせず余裕そうであるな!!貴公に興味を持ってきたのである!!」
アンベルトさんが騎乗した馬の上から言ってきたが、まあ、確かにまだ余裕なんだよなと俺は思いながら、ライナの屋敷へと馬車とほぼ同速を保ちながら走っていったのであった。
書いていて気が付いたんだが、金棒を持って走っている時点でかなりおかしいぐらいの体の性能だと思う。