第53話 盗賊の盗賊
ある~日♪
森の中~♪
ミウを仲間(武器だが)に加えた翌日。俺たちはいつものように歩いていた。
現在は、平原のようなところから森の中へと進んでいた。それなりに大きそうな森ですな。
「さて、このペースでこの方向だと今度はどこにつくかな?」
「そうですね・・・地図から予測しますとおそらくまた町につきますね」
「ふむ、前の街とは違う領主が治めているようじゃな」
「まともな人だけならいいんですけどね」
「「「全くその通りだよな(ですね)(じゃ)」」」
「お兄様たちってまともじゃに人に会ったことがあるんですか?」
「まあ、あの港町の前にちょっとな」
あれは生粋のバカであろう。少なくともあれ以上ひどい人はこの先でるまい・・・・多分。まあ、俺の仲間に嫌がらせみたいなことしたら手加減抜きでの殴打決定だがな。ミウがいるから斬殺ってのもありか。
「ラル様・・・何か悪い顔してますよ」
「ちょっと怖いのぉ」
「鬼神様って腹黒い・・・」
「前世とほとんど変わっていないようでうれしいです!!」
おいこらミウ。俺が人間だった時も腹黒かったとでも言いたいのか?
少し歩いて進むと、何やら商隊の馬車のようなのがいるのを発見した。何か様子がおかしい。
で、このパターンは前にも経験したような・・・。いったん木の陰に隠れて様子をうかがった。
「すでに手遅れじゃな」
「みたいだな」
どうやらまた盗賊に襲われていたようであった。過去形なのは抵抗する人が見られず、血の匂いが漂ってきたのだ。
すでに積み荷などは盗賊たちが担いでいるようである。宝箱のようなものを背負っている人がちらほら・・。ちらりと宝石みたいなのも見えたな。というか、盗賊ってわかりやすくなんかきている服がボロボロだよな・・・。
ふと、なんとなく思った。
「盗賊を逆に襲うってありなのかな?反撃とかと違ってさ」
盗賊行為は、この世界ではその場で殺しても許される犯罪行為である。
つまり、盗賊と分かれば殺しても問題はないわけで・・・。
「盗賊相手ですもんね。別にいいのでは?」
「盗賊の盗賊か・・・面白そうじゃな」
「鬼神様のお好きなように」
「お兄様、ミウも賛成です!!」
全員の意見が一致した。
だが、ただ奪い取るのは面白くない。万が一ここに人が通ったら、コッチが盗賊だともいわれかねないからな。
「でしたら、ミウにいい考えが・・・・」
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「ぎゃははっ!!今回は結構楽だったな野郎ども!!」
「オウっす親分!!大収穫でしたね!」
「女がいなかったのは残念だったけどな!」
「ちげーねぇや!!」
爆笑する盗賊たち。盗賊になってから2カ月、彼らの今までの中で一番の収穫だった。念のためなるべく早く移動して、襲った馬車から離れた場所にいるのであった。
盗賊の親分はこの宝石類を闇市場に売りさばき、大金を手に入れて女遊びや酒に充てる予定だった。子分どもにもある程度は分けるが、大半をいただくつもりでもある。
「ん?親分、向こうから誰かが歩いてきやすぜ!!」
「一人か・・・」
ローブを深くかぶっているようで見た目がよくわからないが、一人なのはわかった。背丈がやや小さい。
そのローブの人は盗賊たちに近づいてきた。
「すいません、聞きたいことがあるのですが・・・」
その声からして女の子だと全員が分かった。だが、ここで襲うのも面白くはない。なので少し様子見てからにするのであった。
「どうしたんだいお嬢ちゃん?迷子にでもなっちまったんかい?」
「ええ、それでこの森から出て、なんとか外に行きたいのですけれども」
どうやら迷子のようである。こんな森の中を一人でさまよっているのもおかしいが・・・まあ、大方家出してきた娘とかだろうと考えた。
「そうかい・・・じゃあ、俺たちが連れて行ってやるが、その前にその顔見せてくれねぇか?」
「いいですよ」
フードを脱いだ女の顔は結構可愛かった。
(これはこれはなかなかの上玉だな・・・胸が絶望しかないが。まあ、このまま森の奥のアジトにでも連れ込んで拘束し、遊んだあとに奴隷商人にでも売り飛ばしてやるか)
「それじゃあ、ついてくるといいぜ」
「ありがとうございます!」
その女の子の明るい笑顔を見た盗賊の中には罪悪感を覚えた者もいたようである。
そのまま歩くこと数十分。盗賊たちのアジトである洞窟の前についた。そこで盗賊たちは歩みを止めた。
「あの、まだ森の外ではないようですが・・?」
「ぐふへへへへ、お嬢ちゃん、こんな見知らぬおじさんたちについて行っちゃいけないと教わらなかったのかい?」
「ここは俺たちのアジトだぜ」
「俺たちの一時的な慰み者として飼ってやるよ!!胸が絶望なのは仕方がないが」
盗賊たちは本性を現した。このあたりまで来れば確実に安全だと思っているのだ。
「・・・ここがあなたたちのアジトでいいのですね?」
「あん?」
いきなり女の子の雰囲気が変わった。先ほどまでのかわいらしい様子からどこか冷めた感じにである。
その瞬間、女の子の背丈が大きくなり、一振りの剣を構えた尻尾が9本ある女に変わった。胸も成長し、明らかに天と地ほどの差になっている。
「なっ!?」
驚く盗賊たちを、そのすきにその女は剣を一振りして近くにいた盗賊の何人かの首をはねた。
あまりの早業に驚きのあまりすぐに体が動かない。
「さて、俺たちもいきますかね」
気が付くと、盗賊たちの周りを女の仲間のようなやつに囲まれていた。何やら変な武器を構えた男が一人、杖や弓を構えた女二人である。
その時、盗賊たちは悟った。自分たちのアジトには宝物がぎっしりと、金が尽きた際に念のために蓄えられている。それをこいつらは狙ってきたのだと。そして、自分たちの命日も今日だと・・・・。
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「ふう、終わったな」
「思ったよりもあっさりでしたね」
「何かを悟ったような顔をしておったのぅ」
「絶望にあふれた感じでしたね」
数分後、盗賊たちをあっという間に描写できない状態にしてしまった。
「にしてもミウ、お前よくこんな作戦を思いついたな」
「えへへ、こういった場合にはこういう手がよく使えるかなと思ったので」
盗賊たちは必ずどこかに隠れ家とかを持っているはずで、そこには人がほとんど近寄らない場所にしているはずだと。
で、そこで倒せばだれにも見つからずに始末できるのではないといったのだ。
あとをついていけば見つけることができるだろう。だが、途中でばれないようにするには何かに注意を向けさせる必要があった。
そこで、タマモの出番である。
タマモの見た目は日本でみんなよく知っている9尾の狐。妖術とかが使えるし、もしかしてと思って聞いたら「変化の術」とかいうのが使えるようである。
そこで、ミウを帯刀させた状態で中学生ぐらいの女の子に変化させた。あいつらがロリコンの可能性もあったから、そのままの姿だとあまり注目されない可能性もあったからね。
案の定、盗賊たちの注意がタマモに集中して、俺たちが後を堂々とつけてきたのには気が付いていなかった。
で、隠れ家とやらにまで着いたところで一気に襲い掛かったのである。
そういうわけであっという間に盗賊たちは全滅したのであった。
「ありがとなタマモ、おとり役のようなことを引き受けてもらって」
「いいえ、私は鬼神様のしもべですから」
タマモがやや頬を赤くしていった。変化で少し疲れたのかな?
とりあえず、俺たちは盗賊たちのお宝も見て見ることにしたのであった。
一応ソティスとカルミアが活躍する話も作りますよ。今のところ彼女ばかり目立っているからね。




