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第48話 鬼神VS海賊たち

展開は読めている。

「よっと、これがこの世界の海賊船か・・・イメージ通り過ぎてなんか良いな」


 海賊船をまずは遠距離射撃で驚かせ、港につかせる前にカルミアの蛇の体に巻き付いてもらって勢い良くここまで投げ飛ばしてもらった俺は、危うくその勢いのまま船上から落下するのを防ぐために何や網張平式部分に金棒で攻撃して、勢いを落として海賊船の端っこで何とか踏ん張り、海賊船の感想を言った。


 木造に、マストに、帆に、操縦桿・・・イメージ通りでなんかテンション上がるな。


「だ、だれだてめぇは!!」


 見た目からして、この海賊船の船長であろうひげもじゃの男性が言ってきた。ここもイメージ通りだな。片手が義手で、オウムのようなのが肩にあれば完ぺきだったんだけどな。両腕しっかりついてるか。


「俺か?たまたまこの町に寄っていたただの旅人だよ!」


 そう言い放ち、俺は金棒を右手に構えて海賊どもの掃討にかかった。なお、賞金首がいる可能性があり、生死を問わずとなってはいたができれば生かして捕らえたいので手加減ありのハンデ戦である。


「一人で乗り込んでくるとはいい度胸だな!!」

「俺たち全員と戦って勝てると思うのか!!」

「返り討ちにしてやるぜ!!」

「はいはい」


 適当に返事し、わざわざやられそうなセリフを言ったやつらから取り掛かることにした。


 素早く動き、即座に迫って、


「そいや!」


 ぼきっ!ぼきっ!ぼきっ!


「ていや!」


 ぐきっ!ぐきっ!ぐきっ!


「そいっ!!」


 がきーん!!きーん!ぐちゃ!


「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっつ!?」」」


 三人とも金棒で軽く手、足、急所を攻撃した。どうやら骨が折れ、何かしらがやられたようで、それだけで気絶した。なお、ばらばらに攻撃しているわけでなく、三人とも等しく同じところを一瞬で攻撃したのである。攻撃した個所は、あらかじめタマモとカルミアに聞いた一番よく効くという部分でもある


「な!?」


 船長らしき人物が驚いているような声を上げた。


「このやろう!!仲間の仇!!」


 熊の獣人であろう大男がまさかり、じゃなかった剣を振り下ろしてきた。


 がきいぃぃぃぃぃん!!


 それを金棒で軽く受け止める。相当な力を入れて振ったであろうが、入れ過ぎてむしろ軽い。


「なに!!岩を持砕くおらっちの剣を片手で受け止めただと!!」

「へぇ、岩砕くのか」


 相当な力のようだが、いかんせんちょっともったいない振り方である。


 そのまま金棒を振り、剣を弾き飛ばす。


「力を入れすぎて逆に軽いんだよ!!」


 そう言い、男の右足の脛を金棒で加減して打った。いわゆる弁慶の泣き所である。


「いったぁぁぁぁぁ!!」


 そのまま熊の男はその場に片足を抑え込んで倒れた。そりゃ痛いだろうな・・・。しかし、カルミアたち結構えぐい痛いところ知っているな。彼女たちに似たようなことされたら俺でも痛いだろうな・・・・。


「よくもベアンを!!」


 今度はエルフのような男が魔法で風の刃のようなものを多数撃ってきた。


 だが、そういった多数の魔法を放ってくる攻撃はカルミアとの戦いのこともあり、金棒を回して簡単に防げた。


「なんだと!!僕の『風のウインド・スラッシュ』連発を防いだ!?」

「なんで一人ずつなんだよ!!」


 そういいながら俺は、懐に持っていた先ほど港町にて海賊退治に使うからと言ってもらったハバネロに似た「ゲゲカラ」という植物の濃縮した粉末が入った「不審者撃退用痛辛玉」とかいうのを投げつけた。


 あたると同時に超真っ赤な粉が男の顔にかかった。


「いっ!?ぎゃぁぁぁっ!?痛い!辛い!痛い!辛い!」


 超もだえ苦しんでいる。効果は抜群なようだし後でちゃんと買おう。


「さて、他にかかってくる奴はいないか?」


 周りを俺は睨んで言った。一人一人じゃなくて全員でかかって来いよ。


「お前らさがれ!」

「せ、船長!」


 どうやら船長が来るようである。


「船長!やつは強すぎます!!」

「怪力のベアンに風使いのアエンがやられたんですぜ!!」

「黙ってろ!!」


 船長と言われるだけあり、かなりの風格があった。仲間にもすごい慕われているようだな。


「おい、てめぇは本当にただの旅人か?ただもんではないな」

「・・・ただの旅人だ。本当にな」

「種族はなんだ?」

「・・・種族というのに入るかはわからないが、俺は鬼神だ」


 別に隠す必要もないからな、普通に答えてやったよ。


「なるほど、神の一柱か。確か荒ぶる神だったな・・・。かなわないわけだ」

「船長!急いで逃げてください!!相手が鬼神だろうと何だろうと、俺たちにとっては船長が大事なんです!!」

「まて、野郎ども。・・・おい、鬼神。俺の首を引き渡す代わりに、どうかこいつらを見逃してくれねぇか?」

「「「「船長!?」」」」


 自分を犠牲にして仲間を逃がそうってか・・・・。


「・・・本当に海賊か?いやに結束が固いような」

「はっはっは、これでも俺たちはドンパチ海賊団!鋼の結束なんだ。だから俺の首を持ってこいつらを見逃してくれねぇか?」

「ダメです船長!!船長がいなくては俺たちには意味がありません!!」

「鬼神!船長の代わりに俺の首を持っていけ!!」

「いや、おらっちの方を!!」

「おいらのほうを!!」


 次から次へと名乗りあげていく海賊たち。それだけ船長が大事ってことか・・・。


「なんじゃこの光景は?」

「なんか暑苦しいことになってますね」

「どんな海賊たちなんですかこの人たち・・・」


 いつの間にか船まで泳いできてたどり着いて登ってきたカルミアたちがきていた。


「何やら様子がおかしくなったので来てみれば・・・なんなのじゃこの光景は?」


 カルミアはすでに呆れ気味である。


「船長!俺たちは船長がいなければ本当にダメなんです!!」

「や、野郎ども、そこまで・・・」


 なんか勝手にあっちはあっちで熱血ドラマみたいなことになっているし。


「ラル様、もう全員捕縛すれば早いですよね?」

「そうだな、それが一番早いよな」


 というか、目的は最初から海賊たちの捕縛だし。


 何やらいつの間にか互いに抱き合って泣いていた船長とその手下たちを周りを囲んで捕らえ、うるさくなりそうだったのでタマモの妖術とやらで一瞬で眠らせてそのまま港町にて引き渡したのであった。


 これが一番早かったな。賞金もなかなか入ったし、まあいいか。


 賞金を手に入れた後、俺たちはさっさと港町をあとにして、とりあえず今はまだこの国の中を旅することにしたのであった。


後日談

ドンパチ海賊団は船長及びその意手下全員が捕らえられたが、そのあと全員が協力して脱獄したという。ただ、別にラルたちには恨みを持っておらず、むしろみんな平等に捕まえてくれたことに感謝しているそうで、ある程度容姿を変えた後、海賊としてではなく商人として生まれ変わって大成功を収めたのはまた別のお話。

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