第37話 領主宅ガロンさん1
ちょい長め
バカが連行されていったその翌日、俺たちはガロンさんの屋敷に行った。
昨晩、バカをとっちめた後ガロンさんにこの街を出る前に屋敷に来て欲しいと言われたからね。
「結構でかい屋敷だな」
「じゃが、あのバカがいた割にはそこそこ手入れが行き届いておる」
「あのバカなひとが特別バカでしたからねぇ」
それぞれの中ではもうあのデブのやつはバカで定着したようであった。
門番の騎士に言い、屋敷の中に案内されて入った部屋には少し目にクマのできたガロンさんが出迎えてくれた。
「よく来てくれた鬼神殿」
「いえ、別にそこまで手間ではありませんし、どうせ今日ここから出ていきますからね」
見た目があのバカとは正反対の鍛えられている人なんだよな。しかも性格まで反対だし、いったい何がどうやってあんな馬鹿が爆誕したのやら。
「昨夜の出来事だが、早くもあの息子・・・いや、もう息子ではないな。ホアは獄中で」気が狂ったようになって結局舌を噛んで死んだそうだ」
どうももう貴族でなくなること自体が嫌で死んだようであった。
「なんか意外な終わり方ですね。てっきりものすごく抵抗するのかと」
「それは私も思っているよ。ホアは昔はいい子だった。だが、いつの間にかあんな風に成長してしまって、気が付いたときには完全にバカになっていた。父親としてものすごく後悔しているよ・・・」
息子ではないといいながらも、父親としていったことはガロンさんはあのバカをいまだに見捨てきれていないことを意味しているようであった。
「そういえば、結局次期当主がいなくなったことになるんですよね?」
「その場合ってどうするのですか?」
「ああ、親戚から選ぶか養子をとって今度こそ間違いないように育てるかのどちらかにするよ。それで鬼神殿は私の養子にならないかね?」
「なりませんね。俺たちは旅をしているし、今はどこにつくなんてことも考えていませんから」
「だよね」
即断った俺に対して苦笑いを浮かべるガロンさん。ちょっとは期待したのか?
「それでね、今日ここに来てもらった理由は今のこともあったんだけどね、本当は昨日のお詫びの品があったからなんだよ」
「別にいいんだけどな。どうせあのバカのしでかした暴走劇・・・いや、喜劇か。それのせいでガロンさんは別に何も悪くはないですよ」
「そうはいってもあれを育てたのは私だ。私に責任があるからね。そこは性分だからこうでもしないと私の気が済まないんだよ」
ほんと何でこんな人からあんな奴が生まれたのかな?
「これを受け取ってくれ」
ガロンさんが手渡してきたのはカードのようなものだった。何も書かれておらず、真っ白だった。
「これはなんですか?」
「これは我が家の、家宝超レアな魔道具『吸引紙』だ」
「『吸引紙』?」
「聞いたことがあるな。確か呪いなんかの類を吸い取ることができるものじゃったかな?」
カルミアはこれが何かわかったようである。
「鬼神殿の仲間だけあってなかなか物知りだな。その通り、つまり呪いなんかをなくせるものです。ただ、性能が性能だけに1度きりの使用しかできませんが・・・」
この世界には呪いの類の魔法も存在する。だが、そういった呪いを完全に解くのは結構難しいのである。
「いえ、十分です。俺たちには呪いを溶ける者がいませんし、この先呪いをかけられる可能性がないとも言えませんからね」
呪いは余りかかる機会はないが、0ってわけでもないからな。
「しかし、家宝と言いましたけどそんな大事なものを私たちにくれていいんですか?」
「ああ、これはご先祖がダンジョンから発見したものらしくてね、初めてのモノだったから家宝にしたらしいんだ」
「ん?ということはご先祖は冒険者だったんですか?」
「ああ、この家は元は冒険者だったらしいが、何かがあって貴族になったといわれている。その何かは記録が300年ほど前の火事で失われてしまってわからないんだけどね」
冒険者から貴族になる例がないわけではないが、結構珍しいのである。
「あと、もう一つあのバカに関してのことであるんだが」
何があるんだ?
まだ続く




