第28話 山賊さん
山登り
「山越え谷越えゆくよ♪〇じゃるの」
「ラル様、それなんの歌ですか?」
「いや、なんとなく思い出しただけだから別に意味はないよ」
俺たちは今山を越えようとしていた。首都を出て数日。この山のふもとに付き、そこから進んでいるのであった。
「このぐらいの山なら楽勝じゃのう」
カルミアはその蛇の下半身を蛇行しながら歩いて(?)いる。彼女はラミアだからな。山の奥とかに住む種族らしいからこのぐらい楽勝なんだろうな。
俺たちはそうはいかないけどね。
登山開始から1時間。けものみちとでもいうべき山道は体力を奪う。
いくら鬼神とはいえ、ちょっと精神的にはきついな。
ダークエルフであるソティスもちょっと疲労の色が見える。まあ、体力がそこまであるわけじゃないからな。毎日の旅で鍛えられているとはいえ、ほとんど平野だったから歩きなれていないんだよね。
「カルミア、大丈夫だったら俺たちをその背中に乗せてくれないか?」
「ラル殿の頼みならいいぞ。じゃが、あんまりソティスには乗られたくないのう」
「何でですか!私だって乗りたいですよ!!」
この二人仲がいいのか悪いのか。
少し進むと、急に誰かが出てきた。
「おいおい、この山を通りたかったら金目の物を渡しな!」
「御宿はそこの美女を置いていけ!!」
「いう事きけねぇならここでぶち殺すぜ!!」
ひげもじゃの男どもである。というか、三つ子かコイツら?声も背丈も見た目もそっくりで区別つきにくいな。
「えっと、あんたらいったい何もんだ?」
「聞いて驚け!」
「俺たちはこの山で有名で!」
「そして輝いている山賊仲良し三つ子!!」
「スン!」
「カタ!」
「ポン!」
「「「三人そろって山賊『ゴーヨック』一家だ!!」」」
「「「おー」」」
なんかつい拍手してしまうほど息があっているな。山賊というよりお笑い芸人か?
「聞いたことないけどな」
「聞いたことありませんね」
「全くの無名じゃのう」
「なんでだ!!」
「俺たちは有名なはずだろ!!」
「この辺の村とかで噂になっていないのか!?」
「「「ええ、全く聞いたこともありません」」」
「「「そこまではっきり言わなくてもいいじゃねぇか!!」」」
なんだろうこのやり取り。
「ラル殿、こ奴らめんどくさいからもうぼっこぼっこにしたらよいのではないか?」
「そうだな。なんかめんどくさいな」
「めんどくさい方々ですよね」
カルミアが杖、俺は金棒、ソティスは弓もできたので首都で買った弓をそれぞれ手に取って構えた。
「おうおう?俺たちと戦う気か?」
「だてに山賊はやっていないんだ」
「俺たちの恐ろしさを味わえ!!」
後日、たまたまこの山を訪れた人たちが、体を地面に埋められて顔中がぼっこぼこにされ、首から「山賊です」と看板が下げられた山賊を見つけたという・・・。
つまりフルボッコ☆




