第12話 村発見
ちなみに、この世界普通に人外いるからね。人間しかいないようなところでもそこまでは目づらしくもなんとも思われないのである。
ライナたちとの別れから3日、俺たちは当てもなくただひたすら歩いていた。
「・・・なかなか町とか村とかないな」
「そうですね・・・」
この世界本当に人口密度低いな。ちょっとは村なんかはあってもよさそうなものなんだが。
まあ、今は盗賊退治の際にもらった少しの資金しかないけどね。そもそも旅人だからあまり大荷物が持てないんだよな。
ちなみに、道中にはスライムやゴブリンなんかも出たがほとんど金棒で一撃だった。ちょっと軽く振るだけであっという間にだもんな。鬼神の力が強いのか、それともモンスターが弱いだけなのか。
ソティスは意外にも強かった。ダークエルフならではなのか、初級魔法とか使えていたし、アンベルトさんから護身用にもらったナイフを使いこなしていたよ。そんなに強かったんかい。
「でも、あの隷属の首輪のせいで逆らえなかったから捕まったんですよね」
ちなみに、俺も少し教えてもらって魔法を使えるようにしたかったのだが、この鬼神の体はどうも魔法が使えない感じだった。
「んー、ラル様の魔力は高そうなんですけど何かが原因で魔法が使えていないようなんですよね」
「そっか、まあ金棒だけで十分だからべつにいいか」
おそらくだが、この体は確かあの女神が上司の神々が用意した体が用意した体とか言っていたな。
あの言いようから考えると、なんかろくでもないような仕掛けがこの体に施されていそうな・・・。
とりあえず、今はそれを考えるのをやめた。
しばらくすすんでいると、村のようなものが見えてきた。
「お、やっと人がいそうなところに「勘弁してくだせぇ!!それ以上は!!」ん?」
なんか嫌な予感がした。何か聞こえたんだが。
村の中に入って声が聞こえてきた方を見ると、そこには村の村長と思わしき老人と村人たち、何やら作物などが大量に入ったかごを運ぼうとしているごろつきたちがいた。
どこに行ってもこういう人はいるのか。
「それ以上持っていかれると我々は飢え死にしてしまいます!!」
「うるせぇ爺!!これも俺達のボスが命令していることなんだよ!」
「痛い目見たくなれば引き下がりやがれ!!それとも、俺たちに攻撃することもできない弱腰野郎どもの集まりかこれは!!」
「そうに違いねぇや!!ぎゃはははぐぼうっつ!?」
ごろつきの一人がいきなり倒れた。
「どうしたんだよぎゃぼぇぇ!?」
さらに一人が、そして次々とごろつきたちが倒れていった。
「な!いったい誰が俺たちを攻げぎゃぼんす!?」
最後に残ったごろつきのリーダーらしき人物が倒れたのであった。
「いったい何が起こったのだ?」
「あの男たちが次々倒れていったぞ」
「みろ!全員体に石がめり込んでいるぞ!」
「な!?もしかして石を投げてこいつらを倒した人がいるのか!?」
村人たちはしばし混乱した。先ほどまで自分たちの育てた作物を奪っていこうとしたごろつきたちを、たった石を投げただけで全員倒した人がどこかにいるのだ。
「ラル様、もう石は十分ですか?」
「ああ、もう全員倒れたからな」
「しかし石だけで倒してしまうなんてさすがです!!」
「ま、手加減して突き破らないようにするのが大変だったよ」
村の端っこにて俺たちはごろつき相手に石を投げていた。なんかむかついたからである。
ソティスに魔法で適当なサイズの小石を集めてもらって、その石を投げただけである。ただ、鬼神の力を超手加減して何とか体にめり込む程度にしてはいたな。下手したら体を突き破ってあたり一面に血が飛び散ってあの作物なんかに血が付く可能性があったからね。
「おい!!あそこに誰かいるぞ!!」
「石が投げられた方角にだ!」
あ、案外あっさり見つけられたな。
「ラル様、どうしますか?」
「別に何もしなくていいんじゃない?」
村人たちがわらわらとこちらに来た。
「お前さん方があのごろつきどもに石を当てたのか?」
「ああ、なんかむかついたからな」
「礼を言うよ!!あいつらがこのまま作物を持っていったら俺たちゃ飢え死にするところだったんだ!!」
「あいつ等を倒してくれてありがとう!!」
「ちょっと皆の衆、少し通しておくれ」
「あ、村長」
やっぱり村長であった老人は人込みをかき分けて俺たちのところに来た。
「お前さんたちがあのごろつきどもに石で攻撃してくれたんじゃろ?」
「ええ!私ではなくラル様がですがね!!」
「おい、ソティスなんでそんな堂々と言うんだよ」
「ほっほっほっほ、なかなか元気がいいようじゃの。まずはあのごろつきどもを倒してくれた礼を言わせておくれ」
「いえ、ただ勝手にやったことですから」
「それでもあやつらを倒してくれたことには変わりはない。ありがとうじゃの。何かお礼でもしたいのじゃが・・・」
「それなら今日はこの村で泊まらせていただけませんか?俺たちは旅をしているんですよ」
「そうか、若いうちは旅をした方がええ。何事もいい経験になるのじゃ。ならば今夜はわしの家に泊まるのがいいじゃろう」
そうして俺たちは村長さんたちの家に泊まることになったのであった。
「そういえば、部屋は相部屋でいいかの?見たところ恋人同士のようじゃが」
「いえ、単に旅の仲間ですので」
「えー」
なんかソティスが残念そうに見てくるんだが。そもそも野宿で寝る際に、毎回朝起きたら抱きしめられているのがちょっと精神的に来るんだよ!!これでも転生前は健全な男子高校生だからな、抱きしめられてその柔らかいものが当たるたびに理性と戦っているんだよ!!
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村の近くにあった森の中。そこに、一人の影があった。
「あの男どもは全員拘束されたようね・・・。あの男たちを倒したらしいあの人を手に入れたいわね・・・」
そういって、彼女は森の奥に消えて行って何かを企むのであった・・・。
彼女はいったい何者ですかね・・・・。