SIDE アタデルベ国の王城2
意外にこのSIDEって考えるのが面白い
ラルたちが中央都市に向かって歩き始めて3日ほどたったころ・・・。
「ふぉぉぉぉぉぉぉっ!我が毛根よ!願わくば不死鳥のごとくたちどころによみがえれ!!」
「・・・何をやっておられるのですか国王陛下」
アタデルベ国の中央都市アタデルベにある王城の国王の部屋で、国王アタデルベ・ダンガ・モンノが鏡の前で奇妙な踊りをしているの見て、国王補佐のガンドリルは呆れていた。
ガンドリルが入室してきたのに気が付き、モンノは踊りをやめた。
「おお、これはこの魔導書に書いてあった儀式でな。なんでもこの踊りを鏡の前でするとたちどころに若き頃のふさふさが戻ってくるというものだ」
「そうですか・・・効き目があるといいですね」
「おい、今妙なことを考えなかったか?」
「気のせいです」
ここ最近、モンノ自身の頭頂部が悲惨になってきた国王が起こすこのような奇怪な行為にはすでに慣れているのであった。まあ、この国王補佐はこの国の国家魔導士でもあるためその魔導書が偽物であると見抜いていたが。黙っていたほうがおもしろいと思って言わないけどね。
(こうして効果がないことをはっきりとご理解いただけた方がいい薬でしょうからね)
「そういえばガンドリルよ、いったい何用で私室に入ってきたのだ?今は休憩時間のはずだが」
この国では「休憩時間」というのが法律で定められている。単に仕事場でのそれではなくて、国王の仕事だけに決められたものだが。初代国王が、多忙な職務に嫌気がさして無理やり組み込んだ法律である。
「国王たるもの、体を壊しては元も子もないから適当な時間で休憩し、趣味でもしなければいけない」という、えらく適当な法律だが今のところ改正はしないようである。
まあ、歴代国王の中には趣味がない国王もいたようで、その人は非常に苦労したようだが・・・・。
「それがですね、鬼神の動向を探らせていた部下たちから報告がありまして」
「何か問題でもあったのか?」
「ええ、我々も騙されていたようなものですが、3日前に鬼神が滞在した町の領主の事なんですが、様々な悪事の証拠が挙がりました。以前から探っていたのですが、今回何かやらかしたらしく、それで明らかになったようです」
「ちょうどあの町の領主に対する不満が大きかったからな・・・」
ふと、モンノは思った。
「その領主はどこへ行った?」
「調べによりますと、それからすぐ離れた平原いて盗賊に襲われたそうです。また、彼の財産がほとんど奪い去られていました」
「悲惨な末路だな・・・」
悪事を働いたとはいえ、あっけない最期には少し同情した。
「その後、鬼神は現在この中央都市目指して移動中。目的は特にないようですので観光みたいなものかと」
「そうか、ならば今この中央都市にいる貴族に伝えておけ。鬼神及びその仲間にうかつに手を出すなとな」
「了解いたしました」
「あ、そういえば娘が戻ってきていたよな。今はどうしているんだ?」
モンノは自分の娘のルーン姫について聞こうとした。この国の第1王女だからもう少しおしとやかに育ってほしかったが、ガントレットをはめて冒険者登録までしてしまっているその状況に頭を悩ませてもいた。元気なのはいいことだけどな
「帰宅後、100人対戦を5回ほど行ったそうです」
「相変わらずだな」
娘の相変わらずの行動に少し笑った。確か今回はダンジョンのコアを破壊しに行っていたはずだが、疲労はしていないようである。
「そういえば、伝え忘れていましたが鬼神にも会っていますよ」
「は?」
「鬼神と模擬戦した上に、一緒にダンジョンまで行ったそうです。護衛として少し雇った感じのようですが・・・」
「何をやっているんだ娘よ!?」
さすがにそこまでは読めなかった。というか、鬼神と模擬戦したって・・・・。
「鬼神の方が勝利したようです。どうやらルーン姫の1番最初に仕掛けてくるあのガントレットによる攻撃も防いでいるようですね」
我が娘ながら、鬼神に勝負を仕掛けたことに驚いていたモンノであった。
「あと、ルーン姫は先ほど100人対戦をしたといいましたが、最近少しおしゃれに目覚めたようです」
「ふぁいっ!?」
それにさらに驚いたモンノ。鬼神との出会いで何かが目覚めたのか?
「まさかとは思うが・・・・娘は鬼神に惚れたとかないよな?」
「・・・可能性は否定できませんね」
否定できないがゆえにちょっと怖い。娘がおしゃれに目覚めるなんて・・・。
「まさか!?我が毛根が復活する前触れか!?」
「そこは普通雨じゃなくて槍が降ってくるとかではないですかね・・・・」
モンノの少しずれた考え方に、適切なツッコミを入れるガンドリルであった。
魔法とかがあるこの世界なら、毛が生える魔法がありそうなものなんだよな・・・。
脱毛する呪いはあるようだが。




