第10話 盗賊の財産の中に
盗賊全滅。
盗賊団退治を終え、アンベルトさんに確認してもらった。
「ぬう、苦も無くここまでやってしまうとは・・・」
アンベルトさんはそういいながらも確認作業をしていた。
何の確認かというと、盗賊たちの生き残りがいないかという事と、カラらが蓄えているであろう財宝などがないかという作業である。
まあ、盗賊たちの生き残りはほぼいないだろうな。なんせ、軽いけがで全身骨折だもんな。いたとしても心に深いトラウマが植え付けられたであろう。目の前で人の腕がちぎれたりしたもんな。
「ふむ、どうやら全員息絶えているぞ」
「そうですか。まあ、ちょっとやり過ぎたような気がしますけどね・・」
ここまで加減無しでこうなるとはな。鬼神の力とはいえちょっと自分でも引くレベルだもんな。今度からもう少し控えよう。
次に、盗賊団たちが何か持っていないか確認することにした。俺たちが襲撃する前にどこかの商人を襲っていたようだからな。
盗賊団たちが寝泊まりに使用していたであろう洞窟に入ってみると、かなりの数の金銀財宝があった。
「どんだけ稼いでいただよここの盗賊・・・」
「今まで結構被害があったからな。しかし予測以上に多いな」
ちなみにこの盗賊たちのお宝はどうするかというと、このいま俺がいるところの法律では4等分され、4分の2は国へ、4分の1はその量を収めている貴族へ、残り4分の1は盗賊を討伐したものに分けられるらしい。
「ラル殿、この中から好きなのを選ぶがいい。今回の功績は貴公にあるからな」
「実質あんまりいらないんだけどな・・」
邪魔になるだろうし、換金したくてもこの世界の通貨の基準が分からないからだまされる可能性があるしな。
ふと、奥の方に何かがあることに気が付いた。
「おい、なんか檻がないか?」
「本当だな。ん?誰かが入っておらぬか?」
近寄ってのぞき込んでみると何かがそこにいた。
「これは・・・人間か?」
「いや違うな。ラル殿、この娘は『ダークエルフ』のようだ」
その子はそこに横たわっていた。眠っているような状態で、肌は褐色、髪の色は銀髪とでもいうべき色、妖艶さが固まったような姿だった。というか、あの女神なんかよりも出ているな。どこがとは言わないが、ライナよりも大きそうである。
「なんでこんな檻の中で眠っているんだ?」
「ラル殿、この娘の首に『隷属の首輪』がかけられているようである。どうやら、盗賊たちが襲ったのは奴隷商人だったようであるな」
奴隷か。この世界にはあるんだな。なければいいなとは思っていたが、やはりどこの世界でも考えるやつがいるんだな。
「この娘はおそらくだが、健康状態がいいようだからどこかに高く売られる予定だったのだろう。そこをここの今は亡き盗賊団に襲われてさらわれたのだな」
「他にはいないようだけど」
「他は男だったから皆殺しにしたのであろう。そして、今夜の宴会でこの娘を・・・」
うん、盗賊団相手に手加減しなくてよかったな。次からも盗賊相手は全力でやってやろう。
「うん・・・何?」
あ、起きた。
「あれ?あのもじゃもじゃのおっさんたちはどこへ・・・・」
「あの盗賊か?全滅させたよ」
「本当?」
「本当である!このラル殿が地獄を見せてやったのである!!」
おい、アンベルトさんは結局何もやっていないだろ。何でそんな偉そうに言うんだよ。
「そう・・・その人が倒したのね?ならば、私をお使いくださいご主人さま」
なんか俺の方に向かって頭下げてきたんだが。
「え?俺がご主人さま?」
「はい、奴隷は主人に仕えますが、私は奴隷商人のもとにいて、ある貴族のところへ奴隷として売り込まれるために商人たちに運ばれていました。ですが、この盗賊たちに襲われてこの盗賊たちがご主人様ということになっていました。そして、その盗賊たちを倒したというあなた様が新しいご主人様でいいでしょう?」
間違ってはいないと思うんだが・・・・。
「ラル殿、奴隷も財産であるから貴公が引き取ることも可能ですが・・・」
「いや、奴隷を持つつもりはないんだが」
「では、この子が王国側に引き渡されてもよいと?」
・・・・どうなんだろうなそこは?
「そもそも首輪を外して自由の身にできないのか?」
「できないのです。首輪の鍵を使うか、この首輪を外せるだけの力を持った人じゃないとこの首輪は外せないのですよ」
なかなか厄介な首輪だな・・・・まてよ?
「アンベルトさん、鬼神でもこれ外せますかね?」
「ラル殿はそういえば鬼神とか言っておったな・・・可能であろう」
「え?ご主人鬼神なの?」
「えっと、とりあえず後ろ向いてくれないかな?外してみるよ」
「わかった」
後ろを向いてもらって首輪に手をかけて引っぱるとあっさりはずれた。
「えらく楽だったな。これでもう奴隷じゃないだろ?」
「本当だ、首輪がない・・・・ありがとうございますご主人さま」
「いや、もう奴隷じゃないし、俺のものでもなかっただろう?」
「いえ、奴隷ではなくなりましたが私を奴隷から解放してくれた恩人です。どうかこの私をご主人さまに仕えさせてください」
なんかちょっと真面目でめんどくさそうな子だな・・・。
「ラル殿、これは観念した方がよいと思うぞ」
「アンベルトさんまでそういうんですか・・・・。ま、俺はどうせ旅人だしな。仲間がいたほうがいいだろう。それじゃあ、俺についてくるのか?えっと・・・名前はなんていうの?」
「私には名前がありません。奴隷でしたのでつけられなくて番号で呼ばれていましたので」
すっごい重い話だな・・・。
「えっと、じゃあ今名前を付けようか」
「本当ですか!!」
ぱあっと目を輝かせるダークエルフの女の子。そんなに輝いた眼で見ないで!!なんか自分が汚れたような気に思えてくるから!!
「そうだな・・じゃあ、『ソティス』でいいか?」
「ソティス・・・はい!!よろしくお願いしますご主人さま!!」
「いや、ご主人と呼ぶの止めて。普通にラルと呼んでくれればいいんだけど」
「わかりましたラル様!」
あんまり変わっていない気がするんだが。
とにもかくにも、元奴隷のダークエルフの女の子が俺のたびに加わることになったのであった。
一人旅じゃなくなったのはまあ、よかったかもね。なんかめんどくさそうなところありそうだけど。
ちなみに、一応服はちゃんと来ていますよ




